お役立ちコラム

ご先祖様の御願に欠かせない沖縄独特の菓子や果物

法事や旧盆などで、故人への感謝の気持ちや想いを表すものとして、お菓子や果物のをお供えすることがありますよね。本土では、羊羹やまんじゅう、落雁などの和菓子を用意することが多いですが、沖縄ではどんなものをお供えするか、ご存じでしょうか。


最近では、故人が好きだったものや、洋菓子などをお供えする家庭も増えましたが、沖縄では琉球菓子のムイグァーシー(盛り菓子)やダーグ(団子)など、独特のお供え物をする風習があります。

琉球菓子のムイグァーシー(盛り菓子)

沖縄でよくお供えされる、琉球菓子を盛り合わせたものを「ムイグァーシー(盛り菓子)」といいます。


ムイグァーシー(盛り菓子)は、お仏壇の左右に一対(二膳)供えることが基本で、一膳に7種類のお菓子を盛り付けます。盛り菓子を盛る際には、前の方に小さめのお菓子、奥の方に大きめのお菓子が並ぶようにします。

【ムイグァーシ(盛り菓子)のお菓子7種類】

①クシチグァーシ:先端が波状になっている板状の落雁。
②コンペー(金餅):丸い形のお菓子。
③シルマンジュー(白饅頭):白い蒸したお饅頭。カルカン。
④ボタンコー:牡丹の柄をかたどった落雁。コーガーシともいう。
⑤ムムグァーシ :桃の形をしたお菓子で、女性の胸を表している。
⑥ハナボール:(花ボーロ)メガネのように2つの輪をくっつけた、大きめの焼き菓子。骨盤を表している。
⑦マキガン:(巻き雁)餡子を巻いたカステラで、腸を表している。 

沖縄の御願ではムイグァーシー(盛り菓子)に限らず「奇数」が重んじられています。

特に「7」はさまざまなしきたりでも用いられ、大切な数字として扱われてきました。
「7」が大切にされる理由は、後生(あの世)までの間に7か所あると言われる「七関所」が由来で、縁起の良い数字とされているのです。


御願だけでなく、祝い事でも法事でも、3個×3個(9個)、5個×5個(25個)などの奇数で詰めるのも、沖縄独特の風習です。

ムイグァーシーと一緒にお供えする琉球菓子

ムイグァーシー(盛り菓子)と一緒に、ハーガーやダーグを一緒に供えることもあります。

どれも他県では見かけない、沖縄独特のお供え物です。


・ハーガー:月と太陽を表すお菓子。ミーフガーグァーシ(丸い形焼き菓子)と、ヒーグァーシ(ドーナツ型の焼き菓子)を小皿に7個ずつ、二皿一対で供える。
・ダーグ(団子):団子のこと。水で溶いた団子粉を丸め、茹でて作る。ダーグを小皿に7個ずつ、二皿一対で供える。

昔はご馳走とされたムイグァーシー(盛り菓子)は、卵、小麦粉、砂糖のみのシンプルな材料で作られ、日持ちがするため、数日間お供えするのに適していました。


素朴な味をしているので、現代ではそれよりも美味しい食べ物が溢れており、ムイグァーシーは食べられずに処分されてしまうことがあります。そのため、後から子どもたちが食べることを考え、洋菓子などの子どもたちが好む種類を選んでお供えする家庭も増えました。

ほかには、故人が好きだったお菓子を選んでお供えする家庭もあります。

御願と法事で異なるお菓子

お菓子をお供えすることが多い沖縄の御願行事ですが、法事の時には「白」、お祝いごとや御願では「紅白」のお菓子をお供えします。

また、お墓参りをする旧暦1月16日の「新十六日(ミージュールクニチ―)」では、白いお菓子を供えます。

お墓参りといえば、一大行事の清明祭(シーミー)ですが、こちらはお祝い行事とされているため、お供えには祝い事用の紅白のお菓子を用意します。

お餅も大切なお供え物

御願の際、お菓子のほかに欠かせないのがお餅です。


重箱とともに供えられるお餅ですが、最近では手作りするよりも、手軽に購入できる市販のお餅を供える家庭も多いです。


お餅は、行事によって種類が異なります。四十九日には「フニムーチ(骨もち)」と言うお餅も欠かせません。フニムーチは、人の骨を模した49個のさまざまな形をしたお餅です。


お皿の上には46個のダーグと同じサイズの丸いお餅を並べ、その上に人の頭にあたるチブルムチ(頭もち)を1つ、ヒサムチ(足もち)2つを盛りつけます。

そのほか、御願行事やお祝い行事では、紅白のお餅や色付きの餅、餡の入ったお餅を用意することがあります。法事の場合は何も入っていない白いお餅を用意してお供えしましょう。


同じ法事でも、二十五年忌(ニジューグニンチ)や三十三年忌(サンジューサンニンチ)はお祝いの意味合いを持つため、紅白や色のついたお餅のほか、餡の入ったお餅を用意してもよいとされています。


行事によって、用意する種類のお餅が違うのは、慣れていなければとまどうかもしれませんが、法事は「白」であることに注意しておけば、安心ですね。


御願には果物も一緒に

沖縄での御願行事では、果物もお供えします。


特に、旧盆になると、スーパーには緑色のバナナやパイナップル、スイカなどの果物が所狭しと並べられていますよね。さらにサトウキビがあったり重箱が多数売られていたりと、移住者にとっては、少し特異な光景にうつるようです。

さらには、お供え用として売られているマンゴーやドラゴンフルーツ、アボカドもみかけたりと南国の沖縄らしい雰囲気。

いろいろ売られていて、どれをお供えすればよいかわからない場合には、定番のリンゴやバナナなどがセットで売られているものもあるので便利ですね。

実は、お供えする果物にもそれぞれに意味があるのをご存知でしょうか。

・バナナ:父親を表している。(5本ずつ仏壇の左右に供える)
・リンゴ:女性性・母性を表している。(1個ずつ左右に)
・ミカン:子どもを表している。(3個ずつ左右に)
・スイカ:頭を表している。(1個ずつ左右に)
・パイナップル:昔はアダンの実だったそう

スイカやパイナップルなどの丸い果物はワラで編んだガンシナを敷いてお供えします。


お仏壇にお供えするときは「対(つい)」となるように左右に置きます。

事情があり、片側だけに置く場合は、1個、3個など、奇数で置いてください。

供え物の意味を知ることで深まる感謝

手軽にスーパーでも手に入るようになった、お供え用のお菓子や果物。

若い方々や移住してきた方の中には、なんとなく、お供え物コーナーに売られているから買ってくる、という方もおられるかもしれません。


それぞれに意味があると知ることで、ただお供えするよりも、よりいっそうご先祖様への感謝や敬意が深まります。

現代ではお供えするお菓子も家庭の好みに合わせたものを用意することもありますが、沖縄独特のお供え物や、意味があって供えられてきたものを次の世代にも受け継いでいきたいですね。

照屋漆器店では、各種仏具を取り揃えております。お供えに必要な仏壇やお仏壇についてなど、ご相談や気になることがございましたら、ぜひお気軽にスタッフまでお問い合わせください。