お役立ちコラム

沖縄のお彼岸ではお墓参りをしない?本土と違うお彼岸の過ごし方

古くから伝わる年中行事が多い沖縄ですが、本土から伝わる新しい行事の一つに「お彼岸」があります。

一年に2回あるお彼岸は、日本独自の風習です。

移住者や若い世代の中には「ご先祖様の供養を行う行事」と、なんとなくは知っていてもやり方がわからなかったり、「彼岸」という言葉は知っているけど実際に何かをしたことがない、という方もおられます。

独特の風習をもつ沖縄では、本土とは異なった拝みを行い、ご先祖様に感謝を伝え供養します。

お彼岸とは?

お彼岸とは、毎年春と秋の2回、お墓参りやお供物を通して、ご先祖様を供養する期間です。
 
お盆には、ご先祖様があの世からこの世に帰って来て供養しますが、お彼岸はこちらから出向いて会いに行き供養する行事なのです。

仏教では、ご先祖様のいるあの世を「彼岸(ひがん)」、私たちが生きているこの世を「此岸(しがん)」と言います。沖縄の方言で言うと「グソー(あの世)」と「イチミ(この世)」となりますね。

仏教が普及している本土では、春分の日と秋分の日の、それぞれを中日とした7日間に、「春の彼岸」「秋の彼岸」としてお墓参りをします。

春分の日と秋分の日は、一年で昼と夜の長さが等しくなり、太陽が真西に沈み一直線になるため、彼岸と此岸がもっとも通じやすくなると考えられているのです。

お彼岸は、もともとはインドから伝わった仏教に由来し、悟りを開く修行の期間とされていました。お彼岸の時期に供養するというのは日本独自の風習で、室町時代から始まったとされています。

農作業が多かった時代には、種まきや収穫が一段落し余裕がある時期であったため、お彼岸の時期にお墓参りや亡くなった人の供養を行うようになったという説もあります。

本土と沖縄の違い

お彼岸の時期になると、本土では、お仏壇・仏具やお墓の掃除、墓参りをします。

地域によっては、他の家庭のお仏壇やお墓に出向いて供養することもあるそう。

お供物には、春彼岸では「牡丹餅」、秋彼岸では「おはぎ」をお供えする他、果物、お花、精進料理なども用意します。

牡丹餅もおはぎもよく似ていますが、実はその中身は同じもの。春に花が咲く「牡丹(ぼたん)」と、秋に花が咲く「萩(はぎ)」が由来で、名前がつけられているんです。

普段何気なく使っている言葉でも、意味を知ると納得。同じものでも、季節によってその名が変わるのは自然を大切にしてきた日本らしさが表れていますね。

沖縄のお彼岸は仏壇を中心に行われる

沖縄のお彼岸は本土から伝わってきましたが、本土とは少し習慣が違います。

伝わってきた当時はお墓参りをしていましたが、もともと独自の文化があった沖縄では、お彼岸に墓参りを行う風習は広がらなかったようです。

沖縄では、ジュールクニチ(十六日)、シーミー(晴明祭)、タナバタ(七夕)以外ではあまりお墓参りをしないのです。

その理由は、むやみにお墓参りすると「周囲の霊魂がついてくる」「周囲の霊魂が寂しがる」という理由や、昔に多く行われていた風葬により気軽に近づけなかったということがあげられます。

また、お墓とお仏壇は繋がっているという考えがあり、お墓参りはせずにお仏壇へ拝むことが多いです。そのため、沖縄ではお彼岸の時に、お仏壇への拝みや、ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)を行います。

沖縄のお彼岸では、お供物も本土とは違います。ウサンミ(御三味)と呼ばれる豚の三枚肉などが入った御馳走や、白いおもちなどをお供えします。移住者も増えた近年では、お彼岸の時期になるとスーパーでもおはぎのセットが売られているのをよく見かけるようになりました。

沖縄のお彼岸のお供え物

・ウサンミ 
豚の三枚肉の煮付けや魚の天ぷらなどをお皿に盛りつけて供えます。

・おもち
一皿に白餅を7個盛り付けて、お仏壇にお供えします。

・盛り菓子
落雁やマキガンなどの、沖縄菓子7種盛りを供えます。

・果物の盛り合わせ
みかんやりんご、バナナが定番ですが、季節の果物を供える家庭もあります。

・ウチカビ(最後に燃やすため添えておきます。)

屋敷の御願とは

沖縄では、お彼岸に屋敷の御願を行う家庭が多いです。

日ごろ家を守ってくれる神々への拝みを行うのです。お彼岸に屋敷の御願を行う際には、まず家の中やお仏壇を掃除し、ヒヌカンの灰などもキレイにしましょう。


屋敷の御願でのお供え物

屋敷の御願でのお供物は、お膳やビンシーと呼ばれる、お供物をまとめる木箱に用意します。

持ち運べるため、御願で巡るのがスムーズですよ。

【屋敷の神々へのお供物】

・お酒
・お米(洗い米/花米)※
・ウチャヌク(三段重ねの白餅3セット)
・果物の盛り合わせ(りんご、みかん、バナナなど)
・シルカビ1セット(半紙で折った、神様へ供えるお金)

ヒラウコー(沖縄線香)タヒラ半(2枚半)

※洗い米:7回すすいだお米、花米:炊いていないお米

【お仏壇へのお供物】

・お酒
・お米(花米)
・ウチャヌク(三段重ねの白餅3セット)
・果物の盛り合わせ(りんご、みかん、バナナなど)

ヒラウコー(沖縄線香)タヒラ(2枚)

屋敷の御願いの行い方

沖縄では屋敷に6柱の神々がいると言われます。

・祖霊神:お仏壇
・火の神(ヒヌカン):台所
・四隅の神(ユンシヌカミ):屋敷の東西南北の角
・門の神(ジョウヌカミ):門
・中陣の神(ナカジンヌカミ):玄関と門の間
・トイレの神(フールヌカミ):トイレ

屋敷の御願では、6柱の神様を順番にまわって拝みますが、始めにヒヌカンから拝みます。

ヒヌカンは「お通し処(ウトゥーシドゥクル)」とされており、屋敷の神々へ報告をしてくれる神様なのです。そのため、御願をする際にはまずはじめにヒヌカンから行うことで、これから順番に御願に行きますよ、と神々に伝えてくれるのです。

昔ながらの屋敷に住んでいる場合は、全部の神々を巡ることができますが、現在の戸建ての家は、門がないことも多いですね。

マンションやアパートなどに暮らしている場合も、全ての神々を巡ることはできません。その場合は、ヒヌカンを仕立てているならヒヌカンを拝みます。きっとヒヌカンが屋敷の神様へお通ししてくれるはず。ヒヌカンを仕立てていない場合は、扉を開いて玄関から外に向けてお供物をし、拝むとよいです。

お彼岸は、言葉を知っていても、その内容についてわからないと言う人も多い行事です

年に2回、季節の変わり目に自然のリズムに合わせて行う供養の行事。


沖縄ではお墓参りをする家庭も少ないので、本土のお彼岸に比べると気軽に行いやすいかもしれません。改めてヒヌカンやお仏壇へ拝み、ご先祖様や神様に日ごろの感謝を伝えていきたいですね。

照屋漆器店では、各種仏具を取り揃えております。お供えに必要な仏壇やお仏壇についてなど、ご相談や気になることがございましたら、ぜひお気軽にスタッフまでお問い合わせください。