お役立ちコラム

沖縄の七夕とは?ご先祖様にお盆をお知らせする行事

七夕といえば、短冊に願い事を書き、織姫と彦星が年に1度だけ会える日として星まつりが開催されますよね。

全国的にはお祭りのイメージが強い七夕ですが、旧暦を大切にする沖縄では、ご先祖様につながる大切な日でもあるのをご存知でしょうか。七夕とご先祖様が関係することは、移住者の方や若い世代の方にとって、なじみのないことかもしれません。

実は沖縄で三大お墓参り行事の1つである七夕は、お盆を迎えることをご先祖様にお知らせする、大切な伝統行事なのです。

日本全国で行われていた七夕のお墓掃除

もともと七夕は「しちせき」と呼ばれ、季節の変わり目となる節句の行事として、大切にされてきました。日本だけではなく、中国や韓国、ベトナムなどのアジア各国でも、節句とされています。

漢字では「棚機」と書き、日本では禊ぎの行事の日でした。織った着物を神棚にお供えして神様をお迎えし、秋の豊作を願ったり人々のケガレを払っていたのです。この、神棚にお供えする着物を織るときの織り機が「棚機(たなばた)」と呼ばれていました。

この棚機が、中国から伝わってきた「織姫と彦星」のお話と結びつき、「七夕祭り(星まつり)」が始まったと言われています。

その後、仏教が日本に伝わるとともに、七夕はお盆を迎える準備期間として過ごすようになりました。7月7日から15日くらいにかけてご先祖様を供養をしたり、身の回りを清め、お墓を掃除していたのです。

昔は沖縄だけでなく、日本全国で七夕の時期に、お墓掃除が行われていたんですね。

新暦に変わり変化した七夕

日本全国で行われていた、七夕のご先祖様供養。

なぜ、沖縄だけにその風習が残っているのでしょうか。そこには、旧暦と新暦が関係しています。

それまで旧暦をもとに暮らしていた日本ですが、明治に入り、新暦(グレゴリオ暦)が導入されました。
旧暦から新暦に移行する際に、伝統行事はそのまま新暦に当てはめられたのです。

しかし、7月15日のお盆をそのまま新暦にうつしてしまうと、梅雨や農繁期に重なるなど不便なため、1ヵ月遅らせた8月にお盆が設置されました。その影響で、七夕とお盆は切り離され、星まつりとしての七夕が目立っていったのです。

それ以降、現代の日本では、お盆が8月13日から15日が一般常識となっています。全国的には、お盆に合わせて仕事のお休みを取ったり、お墓参りに向かったりする方が多いですよね。

新暦よりも旧暦を大切にして年中行事を行う沖縄では、新暦の星まつりを楽しむ家庭も多いですが、旧暦の七夕には、ご先祖様の供養の日として過ごします。

沖縄でのお墓参りは年に3回

沖縄県では、むやみにお墓参りをせず、決められた日に行く家庭が多いです。

これは、へき地で行われていた土葬の名残や、他のお墓のご先祖様が寂しがるなど、さまざまな理由があるとされています。  
沖縄県でのお墓参りといえば、4月に行われるシーミー(清明)が有名ですが、そのほかにあるのがお正月早々に行われるジュールクニチー(十六日)と七夕です。

シーミーやジュールニチーは、大勢の親族がお墓に集まり、賑やかに行われますが、七夕は少人数で行うのが特徴的です。

人数が少ないので、ほとんどの地域ではウサンミ(重箱につめたお供え料理)は用意せず、供え花やウチャトゥ(お茶)など、簡単なお供物で済ませる家庭が多くみられます。盛大には行いませんが、お盆を迎えるために欠かせない、大切な行事なのです。

沖縄で七夕に行うこと

沖縄での七夕は、お墓を掃除し、ご先祖様に「もうすぐお盆ですよ」と、お知らせする日だと言われています。お墓掃除のほか、ヒジャイガミ(左神)様へのお供えをして御願する家庭も多いです。

ヒジャイガミ様とは、お墓の左(向かって右側)に鎮座している、その土地を守っている神様です。ヒジャイガミ様へは、お酒とシルカビ(神様へのお金)、ヒラウコー(沖縄線香)をお供えします。

シルカビは半紙を3枚に重ねて、たて半分に折ったあと、手でちぎって4等分したものを用意します。シルカビの上には、ヒラウコー(沖縄線香)をタヒラ(12本)置きます。

ヒラウコーは、火をつけて焚いたものを拝することが多いですが、最近では火災予防などの観点から、火をつけずに、シルカビの上に並べるヒジュルコー(冷たい線香)として、お供えする家庭が増えています。

ほかにもある、七夕の役割

七夕はお盆の前にお墓を掃除してキレイにする日ですが、実はほかにも大切な役割があるんです。

沖縄では、七夕の別名を「ヒーナシ(日無し)タナバタ」といいます。

年に1度のヒーナシタナバタの日は、神様の目がこの世まで届かず、ご先祖様にも無礼講の日なのです。この日はお墓の修繕や改装など、お墓事をするのに適した日だと言われます。

仏壇を新しく仕立てたりする時にも、ヒーナシタナバタの日を選ぶ家庭が多いです。

トートーメー問題など、お墓やお仏壇に関することが多い沖縄で、お墓ごとなどに取り組むための日取りを決めるのは大変な場合もありますが、ヒーナシタナバタの日は、問題がないとされています。

また、お仏壇の掃除もこの日に行われます。沖縄では、ヒーナシタナバタ以外の日に、お仏壇の中にあるものに触れてはいけないと言われているため、ヒーナシタナバタの時に、家族でお仏壇を掃除し、キレイにします。

一年に一度の特別な日であるため、朝から家族全員でお仏壇を掃除する姿も見られます。

一部の地域では、七夕になると、亡くなってまだ年月の浅い個人が、七夕の日に神様の目を避けてこの世まで降りてくることができると伝えられていました。

まさに織姫と彦星のように「あの世とこの世が年に1度つながる日」なのですね。

そのほか、漁師町など地域によっては、タナバタスーコー(七夕焼香)と言って、海で亡くなった人へ向けてお焼香をしたり、海岸でウトゥーシをして成仏を願いまわす。どこで亡くなったかわからない故人へ向けて拝むため、リューグ(竜宮の神様が祀られている場所)で、海に向かって拝みます。


受け継いでいきたい大切な日「七夕」

新暦の七夕には、短冊に願い事を書いて未来に思いを馳せ、旧暦の七夕には、受け継がれてきた過去に感謝して思いを届ける。意味の異なる2つの七夕を過ごせるのも沖縄の面白いところですね。

沖縄県の人々にとって、とても重要な日である七夕。お盆に帰ってくるご先祖様にとっても、お盆が近づいたことを知る、特別な日なのかもしれません。

忙しい現代では、簡単に済ませる家庭も増えてきましたが、沖縄独自に受け継がれてきた風習を、次世代にもつなげていきたいですね。

照屋漆器では、各種仏具を取り揃えております。沖縄の七夕で行われるお墓掃除やお仏壇掃除に関するご質問や、困りごとなど、気になることがございましたら、ぜひお気軽にスタッフまでお問い合わせください。。