沖縄の仏壇 照屋漆器店 ── 時は変われど、変わらぬ想い
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沖縄県では旧暦に合わせて、さまざまな年中行事がありますが、シーミーやハーリー、カジマヤーなど、大きな行事も終わり落ちつく10月。
大きな行事がなく退屈してしまうことから、沖縄では10月のことを「アキハッティージューグワッチ(飽き飽きしちゃう10月)」と言うことがあります。
確かに、行事のたびに数日前から準備に大忙し、行事の日には大勢で集まり賑わう……新暦行事も旧暦行事も行われる沖縄では、行事の少ない10月は少し物足りない気がするのかもしれません。
そんな、退屈と言われる10月ですが、昔から伝わる伝統の行事「カママーイ」と「タントゥイ(種子取り祭り)」があります。
現代では簡素化され、行われない地域も多いですが、古くから伝わる沖縄独特の伝統行事です。
旧暦10月1日に行われる行事で「カママーイ」とは釜まわりを意味します。
火を使う機会が増える冬が来る前に、火の用心の意識を高めるために行われるのです。
炊事や部屋の明かりなどにまだ薪を使って火を起こして生活していた頃、消防設備も整っていなかったため、一度火災が起きると財産や命を失う危険がありました。
そのため、火災防止の意識を高めようと行われていた行事です。
カママーイの日には家全体をきれいに掃除するだけでなく、釜まわりを念入りに掃除し、ヒヌカン(火の神様)にお茶や線香をお供えし、家内安全を祈願します。
重要な役割の行事の1つとして行われていたカママーイですが、電気やガスの普及により火事のリスクも減ったことから、家庭でカママーイを行う地域も減ってきました。
現在では各家庭ではなく集落単位で行われることが多く、集落の人々がウガンジュー(拝所)に集まり、無病息災を祈願します。
旧暦10月は神無月。
この月には、島根県にある出雲大社に全国の神様が集まるため、各地の神様がいなくなるので、人々がお互いに助け合わなければいけません。
そのため、火災が起こらないようにと、集落ごとに各家庭のかまどを周り、火の用心を呼びかけていました。
本土でも、町内会の方々が「火の用心!マッチ1本火事の元!」というかけ声と共に、町内を回る習慣がありますよね。
昔は琉球王朝の役人がきちんと火の始末ができているか、各家庭を一軒ずつ見回っていました。
しかしこれは表向きの理由で、実際には財産を隠していないか、贅沢をしていないかと言う監視の目的もあったとされています。
沖縄では、カママーイの時期に合わせてイスカバイ(衣替え)を行うことも、昔ながらの風習です。
冬でも天気がよければ半袖で過ごす日もある沖縄。
移住者の方からは衣替えのタイミングがわからないと言う声を聞くこともありますが、このタイミングでイスカバイ(衣替え)をするのも良さそうね。
タントゥイとは、種子取り祭りのことで、種を撒く前に農作物が無事に育つことを祈願する行事です。
沖縄本島でのタントゥイ(種子取り祭り)は、氏神様や農耕の神様に感謝を捧げ、踊りや旗頭で奉納演舞を行ってきました。
現代では、農耕の減ってきた那覇市などの都市部では行われることが少なくなっています。
見かけることの少なくなってきたタントゥイ(種子取り祭り)ですが、商売人などを中心に「収穫=収入」として収穫祈願を行う人が増えているようです。
家庭での祈願では、ヒヌカンに線香を15本供え、当日の朝に家の女性がヒヌカンに拝みを行います。
お仏壇への祈願も行いますが、その場合は家長を中心に家族が集まり、祈願します。
タントゥイ(種子取り祭り)では、線香のほかに大きなおにぎり「テームイ」と、お箸に見立てたススキの茎を2本供えます。
おにぎりには「これだけ大きなおにぎりをいただけるよう、来年も豊作の年にしてください」という願いが込められています。
ススキには「平地一面に広がるススキのように、来年も稲穂(収入)が生い茂ってくれますように」という願いが込められているのです。
また沖縄では、ススキには除霊や厄除けの効果があるとも言われています。
さまざまな行事が簡素化されつつある現代では、ヒヌカンやお仏壇を置いていない家庭もありますよね。
その場合は、リビングのテーブルなどにテームイ(大きなおにぎり)を供え、祈願するだけでも良いですよ。
来年へ向けて、豊作の祈願をしましょう。
種取り祭りは、沖縄本島ではタントゥイと呼ばれますが、竹富島では、タニドゥルと呼ばれます。
竹富島のタニドゥル(種取り祭り)は、600年の歴史があると言われており、重要無形民俗文化財に指定されている、歴史ある伝統行事です。
タ二ドゥル(種子取り祭り)は、竹富島の人々にとっては一大旧暦行事で、島出身の方の中にはスケジュールを合わせて帰省する人も多く、全移民を上げて行われます。
竹富島での種子取り祭りは、毎年立冬の甲申(キノエサル)から癸巳(みずのとみ)の10日間にわたり開催され、日にちによって、過ごし方が変わります。
1日目から5日目は、奉納芸能を披露するための練習期間として過ごします。
6日目は、禁忌。身を慎み、お祝いや騒ぐことを避けて静かに過ごします。この日は、奉納芸能の披露へ向けて、体を休めるという目的もあります。
7日目以降は、御嶽(ウタキ)での祈願を終えたのち、御嶽や拝所(ウガンジュー)の前に設置された仮設舞台で、奉納芸能が行われます。
8日目と9日目には、夜に役人の人々が巡拝し、夜通し祈願をします。
この時、役人の方が各家庭を訪れると、泡盛とにんにくが振る舞われるのです。
これには口をつけなければならないとされ、いただいて帰るのが習わしです。
竹富島の世帯数は2500戸ほどあるので、全部を回るのは大変な仕事になりそうですね。
10日間の間には、島の神女(ノロ、ユタ)も島内の各家庭を周り、翌年の豊作を願います。
宮古島にも同じように行われる豊作祈願「ウガヤン」がありますが、宮古島での祈願は少し特殊です。
ウガヤンとは「始祖祭」と書く通り、御先祖様へ向けて祈願します。
主に門中(父型の血族でつながっている親族)を中心に行われている行事です。
現代ではさまざまな行事が簡素化されていますが、カママーイ(釜まわり)もタントゥイ(種子取り祭り)も、生活する上で大変な行事。
伝統をそのまま受け継いで行うのは難しいこともありますが、各家庭ごとにできる範囲で行い、受け継がれてきた想いを次の世代にも繋いでいきたいですね。
照屋漆器では、各種仏具を取り揃えております。カママーイやタントゥイでも祈願する時に欠かせない、ヒヌカンやお仏壇についてなど、ご相談や気になることがございましたら、ぜひお気軽にスタッフまでお問い合わせください。