お役立ちコラム

本土とは異なる沖縄の冬至「トゥンジー」の過ごし方について

本土と沖縄の冬至の違いとは?

冬至とは、一年で最も昼間が短くなる日、一年で最も夜が長い日です。

季節の移り変わりを表す二十四節気による日程なので、旧暦行事ではなく、毎年新暦の12月22日頃にあたります。2024年は、12月21日(土)が冬至になり、その日付は毎年変わります。

二十四節気とは

古代中国で作られた暦のことで、1年を24分割し、季節の移り変わりを表す指標のことです。昔の人は、この二十四節気を農耕や漁に役立てていました。さらに1節を3つに分けたものを七十二候と言います。

昔の人々は、冬至になると日が短くなり、太陽の光が弱まるため、食べ物も育たなくなり、これから厳しくなる寒さを恐れていました。この時期の気候を表す沖縄の言葉に「トゥンジービーサ」というものがあり、この頃から寒さが厳しくなります。

しかし、冬至の翌日からは、再び日が長くなることから、冬至は「太陽が生まれ変わる日」とされ、この日を境に運気が上昇するとされています。中国や日本では、冬至は「一陽来復(いちようらいふく)の日」とされ、新年がスタートする日として大事にされてきました。

本土と同じく沖縄にも冬至の風習はありますが、その過ごし方は大きく異なります。

本土の冬至の過ごし方

本土の冬至では、かぼちゃを食べたり、ゆず湯に入ったりして無病息災を願い過ごします。

かぼちゃは保存性が高く、栄養価も高いことから、昔から貴重な緑黄色野菜でした。小豆とかぼちゃのいとこ煮が定番メニューですが、疲れた胃腸を労わる小豆粥をいただく地域もあります。

また、冬至は「湯治」の語呂合わせとされています。 香り高いゆずにより、邪気を払ったお風呂で身を清めて翌日からの運気上昇に備えます。ゆず湯には体を温めて風邪を予防する効果や香りによるリラックス効果が期待されます。

沖縄の冬至(トゥンジー)の過ごし方

沖縄の冬至は「トゥンジー」と呼ばれ、その過ごし方は本土と大きく異なり、独自の風習があります。

沖縄では冬至の日に「トゥンジージューシー(冬至雑炊)」を火の神・仏壇にお供えして、日頃の感謝を伝え、家族の健康や幸せを祈願します。家族で食べる行事食として、ボロボロジューシー(雑炊ジューシー)やカチャー(力湯)を用意する家庭もあります。

ジューシーは沖縄の炊き込みご飯として馴染み深いですが、冬至の日に作る「トゥンジージューシー」は芋をふんだんに入れるという特徴があります。

なぜこんなにも違うのか?

まず、温暖な気候の沖縄では、かぼちゃやゆずを栽培する習慣がありません。また、沖縄独自の食文化があり、豚肉や芋類を使った料理が多く、トゥンジージューシー(冬至雑炊)のような炊き込みご飯が定番となりました。

本土のように寒さをしのぐためのゆず湯のような風習はありません。その代わり、農業に関する祈願や祖先供養が行事の中心になります。そこには沖縄独自の信仰文化も大きく影響しており、沖縄ではトゥンジージューシー(冬至雑炊)を作り、火の神・仏壇にお供えすることが大切とされています。

トゥンジージューシーとは

トゥンジーの日に欠かせないのが、「トゥンジージューシー」と呼ばれる炊き込みご飯です。トゥンジージューシーには、豚肉や人参、しいたけなどの食材の他に、芋をふんだんに入れて作ります。

トゥンジージューシーは、もともとターンム(田芋)などの芋を入れた雑炊料理でした。しかし、現代では一般的な炊き込みご飯のジューシーに、ターンム料理を添えてお供する家庭が増えました。

栄養豊富な芋は、昔から高齢者や小さい子どもまで、家族みんなで食べられるので重宝されていました。また、芋は根を引っ張ると連なり収穫されることから「子孫繁栄」を象徴する縁起物としても扱われており、沖縄では重要な食材のひとつとなっています。

トゥンジージューシーには、ターンム(田芋)やチンヌク(里芋)を炊き込むことが多いですが、芋であれば問題ないので、さつまいもや紅芋を入れる家庭もあるでしょう。最近ではトゥンジージューシーは、スーパーでも買えるようになり、手軽に済ませる家庭も多くなっています。

用意したトゥンジージューシーは、家族の健康や子孫繁栄を願い、ヒヌカン(火の神)や仏壇に供えます。

トゥンジージューシーの作り方

一般的なトゥンジージューシーの作り方を紹介します。

【材料(4人分)】

  • 米/2カップ
  • 豚三枚肉/150g
  • 田芋/(正味)200g
  • 人参/40~50g
  • 干しシイタケ/2~3枚
  • 豚だし/2+3/4カップ
  • 塩/小さじ1・1/2弱
  • 醤油/大さじ1+小さじ2
  • 酒/大さじ1

【作り方】

  1. 米は洗ってざるに取る。
  2. 豚三枚肉は茹でて5mm角に切る。
  3. 人参、水に戻した椎茸も5mm角に切る。
  4. 田芋は皮をむき、2〜3cmくらいに切り、水につけたあと、柔らかく茹でる。
  5. 鍋に1〜4までの材料と豚だし、分量の調味料を加えて普通のご飯を炊く要領で炊く。
  6. 炊き上がったら5〜10分ほど蒸らし、全体を軽く混ぜて出来上がりです。

家庭によって具材が異なるので、お好みでゴボウやこんにゃくを加えるなど、家族の好みに合わせてアレンジも楽しめます。ターンム(田芋)やチンヌク(里芋)ではなく、さつまいもや紅芋を使うこともあります。

また、お好みでもち米を加えると、もっちりとした仕上がりになります。もち米を入れる場合は「お米:もち米=3:1」ほどの割合がおすすめです。

トゥンジージューシーのお供え方

トゥンジージューシーが用意できたら、火の神と仏壇へお供えして、日ごろの感謝とともに家族の健康や幸せ・子どもの成長を祈願します。

火の神(ヒヌカン)へのお供え

台所に火の神を祀る家庭では、冬至の日の朝にトゥンジージューシーを日々のお供え物と一緒にお供えします。お供えしたあとに、今日が冬至(トゥンジー)であることを報告します。

ヒヌカンは「火の神」と書いて「ヒヌカン」と呼びます。火の神の他にも「かまどの神」などの名前もある家の中に住む神様です。ご先祖さまのように霊魂のある存在ではないので、お箸は添えません。

仏壇へのお供え

冬至のお昼頃には仏壇へトゥンジージューシーをお供えします。お供えしたあとに、ご先祖様へ日ごろの感謝とともに家族の健康や幸せ、子どもの健やかな成長を祈願します。

仏壇へは、日々のお供え物と、トゥンジージューシーとウサチ(酢の物)をお供えします。仏壇にはかつてこの世に生きていたご先祖様へのお供えになるので、御膳にトゥンジージューシーを置き、お箸を添えましょう。

仏壇の前に家族が並び、一緒に手を合わせましょう。お供えが終わったら、家族でトゥンジージューシーを食べます。家族で楽しく歓談しながら過ごす様子をみて、ご先祖様もきっと嬉しく感じることでしょう。

沖縄ならではの冬至の過ごし方

本土と沖縄の冬至は、それぞれ異なる文化や風習の中で発展してきました。しかし、どちらも一年で一番夜が長い日に、家族の健康や幸せを祈るという共通点があります。

最近では、沖縄でも本州と同じようにゆず風呂に入ったり、カボチャを食べる家庭も増えてきました。本州と沖縄、両方の過ごし方を取り入れる家庭もあります。

どちらの風習も、人々が昔から大切にしてきた、生活の中に根付いた文化と言えるでしょう。