沖縄の仏壇 照屋漆器店 ── 時は変われど、変わらぬ想い
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ご先祖様を大切に思う沖縄県には、先祖崇拝の象徴ともいえる位牌「トートーメー」がありますよね。
沖縄県内の多くの家庭では、とても重要なものとして扱われています。
独特の風習のため、移住者の中には「トートーメーとは?」と、言葉の意味から疑問を持つ方もおられます。
個人で仕立てる本土の位牌とは少し異なり、継承する習わしがある沖縄の位牌。
代々伝わる位牌もありますが、新調する場合には、仕立てるまでの期間が短かったり手順があったりと、慌ただしく準備するのは大変です。もしもの時に慌てないために、基本的なことを確認しておくと安心ですね。
沖縄県で、位牌を通じて先祖供養をするようになった風習は中国から伝わったと言われており、そのルートには2つの説があります。
1つは、中国福建省の人たちが沖縄に移住してつくったクニンダ(久米村)を通して伝わったルートです。
もう1つは、中国から本土へ伝わり、それが臨済宗(禅宗の1つ)を通して、沖縄に伝えられたルートです。
本土と沖縄では位牌の形は違うものの、まつり方が同じなのは、そのためだと言われています。
トートーメー(位牌)を通して亡くなった人をしのび、供養する習慣が見られるようになったのは、1600年代の終わり頃からです。
はじめに位牌を仕立てるようになったのは、首里の士族身分の人達でした。
のちに、だんだんと一般の人たちに広がっていきましたが、沖縄全島にゆき渡るまでは、長い時間がかかりました。
多くの地域では、明治時代から広まったと言われていますが、国頭村のあたりでは大正時代になってから、糸満市あたりでは戦後になってからようやく位牌が仕立てられるようになったようです。
古くから伝わってきたイメージがありますが、地域によっては現代に始まった風習であることに驚きますね。
沖縄の方言で、位牌は「イフェー」といいますが、一般的には「トートーメー」と呼ばれています。
トートーメーは「尊い方、尊御前」が由来と言われており、先祖崇拝の根強い沖縄県で、代々伝わる重要な存在として、とても大切にされていることがわかります。
沖縄県では、ご先祖様はトートーメーに宿り、子孫を見守ってくださると信じられているのです。
沖縄で仕立てる位牌には「白位牌」と「本位牌」があります。
故人が亡くなってから、仮の位牌として準備される白木の位牌です。
沖縄では、白位牌を「シルイフェー」と呼び、その種類には「野位牌」と「内位牌」があります。野位牌はお墓の前に置き、内位牌はお仏壇の後飾りとして置き御願します。
家族などが亡くなった直後は、気持ちも滅入っていたり、やらなければいけないことが多く大変ですよね。しかし、白位牌は葬儀屋が用意してくれることが多く、喪主や遺族が手配をするケースは少ないので確認しておくと安心です。
お通夜の準備に入る時に、故人の枕元に祀られる「枕飾り」がありますが、この枕飾りに白位牌が準備されています。喪主は棺と一緒にお墓まで持っていくのが習わしです。
代々伝わり、祀られる位牌です。
沖縄で多い位牌は沖縄位牌(ウチナーイーフェー)と呼ばれ、個人で仕立てる本土の細長い位牌と違い、沖縄位牌(ウチナーイーフェー)は幅があり大きめで、複数名の札を入れて祀ることができる、独特の形状をしています。
札の数は三枚、五枚、七枚、九枚とさまざまですが、ご先祖様の名前が横並びになって札に刻まれているのです。
沖縄位牌(ウチナーイーフェー)は、上下二段に分かれている二段式の位牌が多く、その家の代々の当主夫妻の位牌札を祀ります。
亡くなった順番で右から札を並べていきますが、上の段に夫の名、下の段に妻の名を同じ列に並ぶように入れます。
最近では、戒名を入れる家庭も増えてきましたが、沖縄県ではもともと檀家制度がないため、戒名ではなく俗名(生きていた頃の名前)を書き入れていました。
名前がいっぱいになり、新しい継承者に押し出された位牌札は、お墓の前で焼却します。
その故人は名前のない「カミ」とされ、家を守る祖霊となるのです。
祖霊となったご先祖様は、神棚(ウタナー)を設けて祀られます。
もともと位牌がある場合には、札に名前を入れるだけですが、新たに仕立てる場合でも四十九日までに仕立てます。
なぜ四十九日までに仕立てるのかというと、四十九日の日に位牌の魂を移し変える「位牌直し(イフェーノーシ)」を行うためです。
新しく位牌を新調する場合には、位牌直し(イフェーノーシ)前に、お仏壇や仏具も準備をしなければなりません。
葬儀だけでも慌ただしくなる時期なので、遺族などで協力し、準備を整えていきたいですね。
お仏壇や仏具を新調した場合、位牌直し(イフェーノーシ)までに仏具のお清めをします。
用意した仏具は、まず水洗いをします。そして塩水を張った容器を準備し、 その中で軽く流したら、普段の食器と同じように洗います。洗浄後しっかり乾いたら、お仏壇に配置しましょう。
四十九日までに仏具を整えたらお坊さんを呼び、読経供養(または入魂供養)をしてもらい、魂を入れてもらう位牌直し(イフェーノーシ)を行いましょう。
お坊さんを呼ばずにお寺に頼んで魂入れを行う場合もあります。
位牌直し(イフェーノーシ)を行ったら、今度は白位牌の「魂抜き」の儀式を行います。
この「魂抜き」を沖縄では「ヌジファー」と言います。
魂抜き(ヌジファー)の儀式も、お坊さんによる読経供養が一般的です。
しかし、なかには「ユタ」に頼んだり、自分達で行うケースもあります。
お仏壇を新調したあとは、それまで設置していた後飾りも処分しなければなりません。
魂抜き(ヌジファー)の儀式を終えたのち、お墓の前で白位牌と後飾りの全てを一緒にお焚き上げをしましょう。
代々受け継がれてきた位牌(トートーメー)ですが「父系血族の長男による継承でなくてはならない」というしきたりがあり、時代の変化にともない難しい問題になっています。
また、自分の子どもに負担をかけたくないという思いや、毎日供養がしたいという理由から、トートーメーをお焚き上げして閉じたあと、位牌分けをして個人の位牌を仕立てる家庭も増えてきています。
沖縄県では「位牌とお墓は繋がっている」という考えもあるので、それぞれのライフスタイルに合わせて、供養の仕方について考えるのもよいですね。
ご先祖様を大切に思う沖縄県の人々にとって、位牌はとても重要な存在。新しく仕立てるにも手順がありますが、施主になるまでわからないことも多いですよね。
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