沖縄の仏壇 照屋漆器店 ── 時は変われど、変わらぬ想い
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日本に古くから伝わる風習として行われている米寿祝い。
88歳を迎える年に親族で集まって長寿をお祝いしますよね。沖縄でも同じように88歳をお祝いする「トーカチユーエー」があります。移住者の方には聞き慣れない言葉かもしれません。
本土の米寿祝いとは少し内容が異なり、ご先祖様に祈願をしたり地域によっては模擬葬式もあるという、沖縄らしい方法でお祝いをします。
トーカチユーエーとは、日本全国で言われている「米寿(88歳)」にあたるお祝いで、沖縄では旧暦の8月8日に数え年が88歳の長寿をお祝いします。
本州と同じく米の文字を分解すると「八十八」になることから、「米寿」とされます。
トーカチは沖縄の方言で「斗搔(とかき)」、ユーエーは「お祝い」という意味です。そのほか、ユニヌイワイ(米の祝い)と言われることもあります。
トーカチとは、元々升に盛った米などを平らにならすために使う竹の棒「斗搔(とかき)」のことをさします。お祝いの日には大きな器にお米を盛り、その中にたくさんの斗搔を立てて「あやかり」として、お祝いに来た人々に配っていました。
このことから、米寿祝いをトーカチと呼ぶようになったのです。
トーカチのほかにも「八十八歳」の漢字にちなんでお米を飾り、集まった人々に御馳走を振舞います。
本来、沖縄では12年毎の「年祝い(トゥシビー)」でお祝いをしていましたが、17世紀以降に薩摩地方から米寿のお祝いが伝わり、沖縄の風習の一つとして定着しました。
13歳から始まり、25歳・37歳・49歳・61歳・73歳・85歳、97歳のカジマヤーと、12年ごとの自分の干支が回ってきた年に行われる
トーカチユーエーは年祝いには当たりませんが、85歳のトゥシビーと88歳のトーカチユーエーを一緒に行う家庭も多いです。
かつてのトーカチユーエーでは、お祝いが行われる3日ほど前に、生まれたところの産川(ウフガー)や御嶽(ウタキ)、ご先祖様のお墓などに向かい、前祝い(メーニゲー)として「お祝いを行いますので、滞りなくお祝いができますようにお導きください」というようなお願いをしていました。
トーカチユーエーに限らず、さまざまな旧暦行事で行われますが、現在では簡素化が進み、前祝いを省いてお祝いが行われることも多いです。
トーカチユーエーでは八十八にちなんだお米や紅白の扇を飾るほか、ハレの料理を振る舞い、お祝いします。
お祝いの日には以下のものを赤い敷物の上に飾ります。
→大きなザルや枡に盛り供えます。
→米寿を迎えた本人の氏名と生年月日・お祝いをする日を記入した紙を巻いて、ザルや枡に盛ったお米にさします。
→各枡に赤を基調とした紙を巻き、一升枡に「寿」、五合枡に「米」、一合枡に「祝」と記す。3つを合わせると「祝・米寿」となります。
家庭によっては扇を飾らなかったり、米寿を祝う歌を書いた壁掛けを床の間に飾るなど、しきたりはさまざまです。
トーカチユーエーでは、八十八歳を迎えた本人は、稲の絵が描かれている黄色の紅型の羽織物を着ます。
黄色からは、収穫を迎える稲穂が光り輝く様子がイメージできます。このことから、本土では「黄色」や「金茶色」の物が米寿に贈られるようになりました。
お祝いの席では、八十八歳を迎えた本人の手から、集まった人々の手へと、御馳走をお裾分けします。集まった人々は、お祝いの言葉や今後の健康長寿を願う言葉をかけ、長寿にあやかります。
お裾分けの定番として、「マチカジ(松風)」と呼ばれる琉球菓子が配られますが、そのほかにもサーターアンダギーが選ばれることもあります。ここにも沖縄らしさが垣間見えますね。また、お祝い膳として赤飯や天ぷらなどが振舞われます。
沖縄でお祝い事に欠かせないのがヒヌカンやお仏壇へのお供えです。トーカチユーエーでもごちそうをお供えし、お祝いの報告とともにこれまでの感謝や今後の健康と長寿を祈願します。
お酒・花米(一対)・洗い米(中央に一皿)・ウチャヌク(三段に重ねた白餅)3セットに、日ごろのお供物(塩、水、供え葉)
※花米:炊いていないそのままのお米
※洗い米:お米を七回すすいだもの
一膳目
お酒、花米(一対)、洗い米(中央に一皿)
二膳目
赤飯、ハレの味噌汁(イナムドゥチなど)、ウチャワキ
そのほか
ウチャヌク2セット、ウチャトウ
※ウチャワキ:御馳走を盛り付けたお皿
※ウチャヌク:お餅
※ウチャトウ:お茶
また、鰹・塩・昆布もお供えし、後に集まった方々へ小分けにして配ります。
小分け用にのし袋などを用意し、「あやかり昆布」などと書いて配る家庭もあります。
浜比嘉島など、地域によっては「模擬葬式(カタチヌメーヌウグヮン)」が行われることもあります。
お祝いの前日、真夜中にトーカチユーエーを控えた本人に白衣(死装束)を着せ、西枕にして寝かせます。そして枕元に線香を立て、枕飯(カタチヌメー)をそなえます。
親族がまわりを取り囲むように座り、死をいたむように声を出して三回泣き真似をし、お祈りをします。
そして日付が変わった瞬間に、三線や太鼓を鳴り響かせて、寝かせられていたおばあちゃん(またはおじいちゃん)が飛び起き、みんなで踊り出すのです。想像すると楽しそうですよね。
これは「新しく生まれ変わる」「人間が再生して誕生する」ことを意味するそうです。沖縄のお墓の子宮回帰に通ずるところがありますね。
かつては、年寄りが長生きすると子孫が繁栄しないという考えがあったことから、このような儀式が行われ始めたと言われています。
こうして模擬葬式を体験し、新たに生まれ変わるという沖縄独自の風習も、長生きの秘訣なのかもしれませんね。
本土の風習を取り入れながらも沖縄独自の方法で行われるトーカチユーエー。
本土のように賑やかにお祝いするだけでなく、沖縄独自の死生観にも触れられるお祝い事です。
近年では家庭でお祝いするだけでなく、レストランなどの宴会場を利用する方も増えているようです。様々な行事で簡素化が進んでいますが、ご先祖様に命を繋いでいただいたからこそできる祝い事、お仏壇に向けて感謝や祈願も大切にしていきたいですね。
仏具や行事についてお困りの事やご相談がございましたら、ぜひお気軽に照屋漆器のスタッフまでご相談ください。