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旧暦8月15日の沖縄伝統行事「ジューグヤ(十五夜)」について。中秋の名月に供える縁起物「ふちゃぎ」とは?

本土とは違う沖縄の十五夜について

2024年9月17日(火)は沖縄で旧暦8月15日にあたる「ジューグヤ(十五夜)」です。

この日は沖縄では「ハチグヮチジューグヤ」(八月十五夜、旧暦での中秋の名月)と呼ばれ、本土と同じく、いわゆる「中秋の名月」として知られる日です。この日は、秋の真ん中に位置するため「中秋」と呼ばれます。新暦では、通常9月中旬から10月初旬の間にあたります。

この時期の月は「名月」と称され、1年の中で最も美しいとされています。空気が澄んでおり、月がくっきりと見えるため、古くから人々はこの夜を楽しみにしてきました。

沖縄では、十五夜は豊作や無病息災を祈願したり、地域によっては綱引きが行われたりする特別な日となっています。

また、本土の十五夜ではお月見団子やすすきをお供えしてお月見をしますが、沖縄では「ふちゃぎ」という変わった見た目のもちをお供えしたり、沖縄各地で大綱引き、エイサーなど集落をあげた盛大な旧暦行事が行われます。行事の内容は地域によって様々で、宮古では伝統集団舞踊であるクイチャーが有名です。

沖縄で十五夜にお供えする縁起物「ふちゃぎ」とは

沖縄の各家庭では、十五夜にヒヌカン(火の神様)と仏壇に「ふちゃぎ(塩豆もち)」をお供えして、豊作と無病息災の祈願をします。

ふちゃぎは皿に餅がくっつかないように、月桃(サンニン)やユウナなどの葉で盛り付けをしています。これらの葉は高い殺菌作用があり、保存にも適していることも理由としてあげられます。

「ふちゃぎ」という名前の由来

「ふちゃぎ」という名前は、「拭き清める」という意味の沖縄方言「ふちゃぐ」から来ていると言われています。これは、不浄を払う、清めるという意味を持ち、縁起が良いものとされています。

「ふちゃぎ」の特徴

ふちゃぎは、長方形や楕円形の形状をしており、表面に塩茹でした小豆がまぶされています。この小豆が「ふちゃぎ」の特徴の一つです。

おもちは「月」を表し、小豆は「星」=「子ども」または「子孫」を表すとされています。そのため十五夜にお供えする「ふちゃぎ」にはたくさんの小豆をまぶし、子孫繁栄を願う意味合いもあります。

また、小豆には「実り」や「豊作」の意味も込められています。おもちが隠れるほど小豆をまぶすことで「家族がいつまでも健康で幸せに暮らせますように」という願いを込めます。

さらに、小豆を潰さずにまぶすのは災難避けを祈願するという意味もあります。小豆には魔除けの効果があると言われ、昔から赤色は魔除けの色だと言われていることから、厄を払うという意味も込められているのです。

「ふちゃぎ」のつくり方はシンプル

ふちゃぎの作り方はシンプルで、主にもち米や上新粉で作られたもち生地を蒸し上げ、崩れない程度に塩茹でした小豆をまぶします。水分量ともちが温かいうちに小豆をまぶすのが、おいしいふちゃぎに仕上げるポイントです。

昔ながらの作り方ではもち粉を使用することが多いのですが、より手軽なだんご粉で作るのもおすすめです。また、十五夜の時期に沖縄県内のスーパーへ行けば、惣菜コーナーなどで販売されているので、手軽に買うことができます。

もち生地に砂糖を使用しない場合もあり、甘くないのが特徴です。そのため甘いものが苦手、という方にもおすすめです。

しかし、最近ではもちや小豆に砂糖で甘みをつけた「甘ふちゃぎ」という商品や、もち生地が黒糖味や紅芋味、さらにはかぼちゃ味になっているものなど、バリエーションが豊富になり、甘いものが好きな方、苦手な方、どちらも美味しくふちゃぎを味わえるようになりました。

ふちゃぎはそのまま食べることが多いですが、温めて柔らかくしてから食べると、もちもちとした食感が一層引き立ちます。

沖縄の十五夜の拝みの流れ

ふちゃぎの用意が出来たら、ヒヌカン(火の神様)と仏壇に供えて手を合わせます。

ふちゃぎをお供えする際は、ヒヌカンの場合はお皿に乗せれば大丈夫ですが、お仏壇にお供えする場合は、お盆にお皿を置き、お箸まで添えるようにしましょう。

順番としては、まずヒヌカンへ手を合わせ、今日が十五夜であることを報告します。感謝と共に、今後の家族の健康を祈ります。そのあとに、お仏壇へ同じように手を合わせます。これで沖縄の十五夜の拝みは終了です。

拝みが終わったら、ふちゃぎは家族全員でいただきます。お供え物を食べることで、神様や先祖の加護を受けると考えられています。縁起物なので、1口でも全員が食べることが良いでしょう。

旧暦8月15日に行う沖縄伝統行事「大綱引き」

沖縄の伝統行事である大綱引き。もともと地方の農村行事としての綱引きは、豊漁・豊作祈願・厄払いなどの意味が込められた伝統行事でした。

沖縄三大綱引きである「那覇大綱挽」、「糸満の大綱引き」、「与那原の大綱曳き」をはじめ、沖縄各地で大綱引きイベントが行われており、そのほとんどが、祝祭日などに開催され、観光イベント化されています。

毎年旧暦8月15日に行われる古式豊かな伝統行事は「糸満の大綱引」のみとなりました。

古式伝統を守る「糸満大綱引」について

漁業が盛んな糸満市では、豊年と大漁祈願、家内安全、無病息災を祈って、伝統的に毎年旧暦の8月15日に大綱引を行います。そのため、糸満大綱引を「ハチグヮチ・ジュウグヤー」、「ジュウグヤー」とも呼びます。

使用される綱の長さは180メートルにもなり、県下で最大級を誇ります。なんと、この巨大な綱は、2週間前に各地域で作られた小綱を合わせていき、当日に約3時間で作り上げます。

また、大綱引きの前に「道ジュネー」と呼ばれるパレードがあり、祭りを彩ります。旗頭を先頭に舞踊や子どもエイサーなどを披露しながら、約1キロメートルを練り歩きます。

パレードが終わると、大綱の南北両陣営から「イチマンマギー」、「マカベチャーン」という糸満の伝説上の人物に扮した若者が綱の中央で対時し、にらみ合います。にらみ合いが終わると綱引きが開始されます。

1,000人余の市民が一丸となって盛り上げる糸満大綱引きは、市民でなくとも誰でも参加可能です。

糸満大綱引は平成25年度に、ふるさとイベント大賞において大賞を受賞し、名実ともに糸満を代表する伝統行事となりました。

沖縄の旧暦行事のひとつ「ジューグヤ(十五夜)」

全国的にも十五夜は、自然の美しさと四季の移り変わりを感じるための大切な機会であり、古くからの伝統が今も受け継がれている行事のひとつです。

沖縄では、旧暦の8月15日である「ジューグヤ(十五夜)」は、重要な伝統行事として今も人々に親しまれています。農作物の収穫に感謝し豊作を祈り、家族の健康を願うために大切な日となっています。

照屋漆器では、ヒヌカンやトートーメーに関することなど、ご相談を承っております。

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