沖縄の仏壇 照屋漆器店 ── 時は変われど、変わらぬ想い
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沖縄での御願行事に欠かせない仏具に「ウチカビ」と「シルカビ」があります。どちらもあの世のお金ですが、それぞれ役割が違います。
移住者の方や沖縄の旧暦行事に慣れていない方の中には、ご先祖様に送るウチカビと、神様へ捧げるシルカビの違いに戸惑う声もあります。
家庭により、さまざまな考え方がありますが、一度基本的なことを確認しておくと安心ですね。
沖縄では、ご先祖様をもてなす旧盆などの年中行事で、ウチカビを焚いて煙にし、あの世へ送る風習があります。
一方で、屋敷の御願や旧正月の他、ウガンジュ(拝所)などの神様へ拝む行事では、シルカビを供えます。
ウチカビがご先祖様へ送る「あの世のお金」と言われるのに対して、シルカビは神様へ捧げる「税金」と言われています。
ここからは、似ているようで役割の違う「ウチカビ」と「シルカビ」について、みていきましょう。
ウチカビは、ご先祖様があの世でお金に苦労しないように、お盆やお墓参りの時に焚きあげて送る「あの世のお金」です。地域によっては「ワタクサー(へそくり)」と伝えられているところも多いです。
ウチカビは漢字で「打ち紙」と書き、黄色い紙に小判のような二重丸「◎」が5個× 7個、もしくは5 × 10個で押印されているのが特徴です。
今ではコンビニにも置かれているほど沖縄県民にとっては馴染み深い仏具の1つで、お店で手軽に購入できますよね。しかし、昔はそれぞれの家庭で銅板の型を使い、手づくりで一つ一つ打ち込んでいました。
昔は藁を原料としていましたが、現在は県内唯一の工場で作られており、その原料には沖縄の古紙が使われています。
ウチカビの呼び方のほかに「ンチャビ(銭紙)」や「アンビカジ(かぶり紙)」とよぶ地域もあります。
日本で使われるお金に「円」と言う単位があるように、ウチカビにも「元」と言う単位があります。
お金としての価値は1枚で10,000円とも20,000,000円とも言われており、考え方はさまざまです。ご先祖様に送るお金なので、価値が高い方がご先祖様にも喜ばれそうですよね。
ウチカビの風習は、1000年以上前に中国で始まりその後アジアの国々に広まったと言われています。
沖縄では、琉球王国時代の14世紀頃に福建省から移り住んできた人々によって、ウチカビの風習が伝わったという説があります。
現在のウチカビとは違い、昔は硬貨などが使われていました。亡くなった人があの世へ行くため、三途の川を渡る際の船賃として、お金が一緒に埋葬されていました。
沖縄ではさまざまな年中行事でウチカビを焚きますが、行事の簡素化により、旧盆だけ焚くという家庭もあります。
ウチカビを焚く時には、専用の金属ボール(カビバーチ)の底に網を敷き、その下に水をはって焚きます。
ホームセンターなどでは、ウチカビを燃やすための金属ボールやお箸がセットで販売されていますが、昔は竹などを刺した芭蕉の葉などを使って網にしていました。
ウチカビを焚く枚数は御願行事によって、異なります。
一般的には、1人5枚、子供たちは3枚と言われていますが、家族の人数分焚く家庭もあり、その枚数はさまざまです。
あればあるだけよいとして、たくさん焚いて送る家庭もあります。たくさん焚く際には、火の上がり過ぎに注意が必要です。
ウチカビが焚き終わったあとには、ウハチ(お初)を金属ボール(カビバーチ)に入れてご先祖様の手土産として送ります。
「ウハチ(お初)」とは、ご先祖様へお供えするために用意したご馳走から、最初に取り分けたおかずのことです。多くの家庭では、重箱料理のウサンミ(御三味)が用いられます。
時代の変化に伴い、住環境も変わっているため、ウチカビが焚けない家庭もあります。
マンション等の火災警報機の設置により、家の中でウチカビが焚けない場合は、火をつけずにウチカビを燃やす流れまでを行い、他のゴミと混ぜずに袋に入れて処分すると言う方法もありますよ。
世界には、沖縄と同じように先祖崇拝の文化を持つ国々があり、中国や東南アジアで使用されるウチカビには、通貨を模したものや紙幣のデザインを取り入れているものもあります。
最近では、沖縄県内の若い世代に伝わりきれていない伝統行事の意義を次世代に繋いでいくため、海外のデザインをもとに新しいウチカビとして様々なデザインが開発されはじめています。
ご先祖様に供えるウチカビに対して、神様に捧げるのがシルカビです。
ウチカビはお店で買えますが、シルカビはあまり売られていません。シルカビは簡単に作れるので、それぞれの家庭で手づくりされるのです。
一般的には「シルカビ」と言いますが、一部の地域やユタなどからは「クバンチン」とも呼ばれます。
シルカビは、あの世の帳簿やあの世の税金とも言われています。
あの世のご先祖様へお金を送るためには、神様への税金を納めなければならないというあの世のルール。なんだかこの世の仕組みと似ていますね。
日常的にもシルカビを使うことが多いので、半紙を常備しておくと便利ですよ。
「シルカビ」は漢字で書くと「白紙」で、書道にも使われる半紙を重ねて作ります。
シルカビの作り方は簡単で、半紙を3枚重ねて作ります。半紙には、つるつるしている面とザラザラしている面がありますが、つるつるしている面が表になるように縦半分に折り、さらに横に4等分にして折ります。
この折り目に沿って、手で4等分にちぎれば完成です。何度か折り目を付けると、まっすぐきれいに切れやすいですよ。
※シルカビを作る際には1つ注意点があります。
シルカビを四等分に切る時に「ハサミなどの刃物を使わない」ということです。神様に捧げるものに刃物を使うのはよくないという意味合いがあります。
4等分にちぎられた3枚重ねのシルカビを1組として、その上にお供え物を乗せて神様にお供えします。
最近では屋外での拝みにはヒラウコー(沖縄線香)に火を灯さずに供えるヒジュルウコー(冷たい線香)が多く利用されますが、ヒジュルウコーの下にシルカビを敷き、座布団のような役割を果たすこともあります。
神様への拝みのあとは、ウチカビと同じように金属のボール(カビバーチ)の中でシルカビを焚きますが、その後、供えていた花米と洗い米をひとつまみずつ置き、さらにお酒を3滴かけて拝みを終えます。
似ているようで役割の違う、ウチカビとシルカビ。基本的なルールはありますが、細かな部分については、家庭によりさまざまな考え方があります。
難しく考えすぎず、ご先祖様への感謝の気持ちを大切にお供えをしていきたいですね。
照屋漆器漆器ではウチカビをはじめ、さまざまな仏具を取り扱っております。気になることがございましたら、ぜひお気軽にスタッフまでお問い合わせください。