沖縄の仏壇 照屋漆器店 ── 時は変われど、変わらぬ想い
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沖縄には独特の文化や風習があり、移住者にとって馴染みのないものが多いですね。中でも「ユンヂチ」は、本土で生活をしていると耳にする機会も少ないのではないでしょうか。
沖縄県民にとって、シーミーや旧盆に並んで重要であるユンヂチの年には、テレビCMや新聞の折り込みチラシで目にする機会が増えます。移住者にとっては理解するのが少々難しいとの声もある風習ですが、ご先祖様を大切にする沖縄の人々にとって、仏事やお墓事を決める大切な時期なのです。
現在一般的に使われている新暦は「太陽暦」と呼ばれ、1年を太陽が出る時間の長さで決めており、年間日数は365日から366日とされています。
沖縄で重要視されている旧暦は「太陰太陽暦」と呼ばれ、1年を月の満ち欠けで決めており、年間日数は354日とされています。
そうすると新暦と旧暦では、11日くらいの差がでてきますね。
これをそのまま進めていくと、数年後に季節と暦が夏と冬でひっくり返ってしまうことになり、大変です。
3年で約1ヶ月分のズレが生じるため、調整する必要があります。
そのため、本来は暦にない「閏月」と呼ばれる1ヶ月をつけ加え、1年のバランスをとるのです。
新暦にも4年に1度、調整される閏年がありますが、2月が1日増えて29日になるだけで、ユンヂチと同じ時期ではありません。
閏月は、太陽暦が採用される1873(明治6)年以前に使われていた天保暦により、いつ閏月を置くかというルールが決められていました。19年のうちに7回、33ヶ月に1回訪れます。現代のように高い技術もない頃から計算され尽くしたルールがあったことに驚きを感じます。
1年のうちどこに閏月が入るかは、その年によって違います。
2023年はユンヂチの年です。
2023年のユンヂチ 新暦1月22日(日)〜2024年2月9日(金)
閏月は旧暦2月 新暦3月22日(水)から 4月19日(水)
次回のユンヂチは2025年です。
2025年のユンヂチ 新暦1月29日(水)〜2026年2月16日(月)
閏月は旧暦6月 新暦7月25日(金曜)〜8月22日(金)
以前は閏月のひと月を「ユンヂチ」と呼んでいましたが、現在はユンヂチが入る年の1年間をユンヂチと解釈するようになりました。
地域や家庭によっては、閏月の1ヶ月間が本当のユンヂチという考えを持つなど、さまざまな意見があります。
ユンヂチの年には、普段なかなかできない仏事やお墓事に関することができます。
そのほかトートーメーに関することなどを行うタイミングに適しています。
この時期にするとよいのが「筋正し(シジタダシ)」です。
沖縄の位牌継承は「トートーメー 」と言われ、父系の血筋が継がなければならないなど、さまざまな習わしがあります。
しかし何らかの理由で継承の流れを間違えた場合に、ユンヂチのタイミングで戻すのがよいとされています。
沖縄の仏事やお墓事は多くの決め事があるため、何かを決めるにも一筋縄ではいきません。ユンヂチがあることで、親戚同士で集まって話し合いをしたり、しきたりにとらわれない改装や墓じまいなどが行いやすくなります。
ユンヂチとは「余分な月」の意味で、新歴と旧暦の差を埋めるための調整の月です。
本来存在しないので、良いとも悪いとも判断ができない期間なのです。
そのため、普段気にして進めにくい仏事やお墓事ができます。
なぜ気にするのか。
それは、お墓や仏壇は「先祖神の家」とされており、勝手に移したり新調をすると先祖神から怒られるのです。
1つ目は琉球の古文書にも出てくる「アマミキヨ」など神の世界に住む神様。
2つ目は自然界に宿る神様。様々なところに御嶽や拝所があり、祈りが捧げられています。
3つ目は先祖神。沖縄では亡くなった後、3代すぎると「先祖神」という神様になると言われています。
ユンヂチでいわれる神様=あの世に暮らす神様のことを指します。
あの世の神様の世界では、暦上「日がない(ヒーナシ) 」時期となり、普段は子孫を見守る先祖神もユンヂチの間はこちらの世界が見えないとされます。そのためこの世の都合で物事が進められます。
年によっては、4月が2回訪れることがあります。
そうすると「シーミーを2回やるの?」という疑問が沸きますよね。
ユンヂチで2回目に訪れる月は、本来存在しない月とされるので、シーミーを2回行う必要はありません。
もしもシーミーが2回訪れたら……
一年の中で最も盛大に行われるイベントのため「また今月も!」と、立て続けに準備をするのは大変です。ご先祖様は大切ですが、この世のルールがあることで、負担になりすぎずに先祖供養を受け継いでこられたのかもしれません。
本土では沖縄とは逆に、閏年には「お墓を建てると良くない」という言い伝えがあります。
これは、江戸時代の頃に旧暦で1年が13か月あり、年間の給額付が同じである他の年に比べて、節約をしなければいけないためにいわれていました。
その名残が、現代も西日本や九州地方に残っています。
時代や土地によって全く異なる考えが伝えられているのは面白いですね。
これまで、天保暦で作られたルールにより、自動的に計算できた閏月。
しかし、2033年の夏から2034年春にかけて6ヶ月のあいだに微妙なズレが起き、これまでのルールが適応できなくなる問題が発生しています。
秋分(8月)が新月のため、本来は旧暦11月にある冬至が10月にきてしまい、これまでと違う状態になります。
この問題は、暦に関心のある人々の間で話題になっていますが、旧暦を元に行事を行う沖縄県民にとっては特に気になる事態です。
1873年に明治政府が旧暦を廃止したため、現在は旧暦を決定する機関もなく、この問題は2023年現在解決されていません。
日本の暦を担当する国立天文台が、2014年に「天保暦導入後、初めて起こる事態」とも解説していたこの問題。有識者や民間の団体により、いくつかの解決案を考えるなどの動きが出ており、今後の動きに注目です。
ご先祖様を大切にする沖縄県民にとって大切な時期であるユンヂチ。
最近では、生活スタイルの変化や継承が難しいことなどにより、ユンヂチを気にしないという人も増えてきました。さらには気になる2023年問題も。
それでも御先祖様の存在は変わることなく、これまで受け継がれてきた命に感謝しながら、それぞれの環境に合わせてベストな方法を選ぶことが、ご先祖様にとっても1番の供養となりそうですね。
ユンヂチでのお困りごとや気になることがあれば、専門スタッフがご相談をお受けいたします。お気軽に照屋漆器店までお問い合わせください。