お役立ちコラム

ライフスタイルに合わせてどう変わる?沖縄文化に欠かせない仏壇仏具

多様化と言われる今の時代。生き方や暮らし方、サービスなど、さまざまな分野で多様化が進んでいます。伝統行事や風習もそのうちの一つ。
特にコロナ禍の影響で、伝統文化が簡素化されつつある昨今、トートーメーや仏壇・仏具に触れる機会も減ってきています。
若い人にとっては「まだまだ先の話」と、後回しにしがちなトートーメー問題。家族が元気なうちにしっかりと話しておきたいテーマです。シーミーとは中国から伝わった祖先供養の行事のことで、お盆、正月と並ぶ沖縄の三大行事のひとつです。

トートーメーとは?

諸説ありますが、もともとは「尊いお方の御前」の意味で、漢字では「尊御前」とも書き、先祖代々
が宿る「位牌」のことを指します。
ご先祖を思う気持ちの深い沖縄では、特にトートーメーを受け継ぐことは重要な役割と言えます。
多くの家では親族をまとめる長男の家系が継承しています。

家庭の中にあるお仏壇の役割

多くの方にとってお仏壇とは、トートーメーと共にご先祖様や亡くなった親族を供養し、対話をするためにあるものというイメージでしょうか。もともとは、寺院にある内陣(ないじん)という、ご本尊を安置してある本堂を小さくし、「家庭の中の小さなお寺」として、一般家庭に持ち込むために作られたものでした。
現在は、ご先祖様への供養の他に、命を繋いでくれたことへの感謝の気持ちや、安らかに暮らせるための祈りを行うなど、心の拠り所としても大きな存在となっています。

継承に悩む人も増えている

県外に比べて年中行事が多く、お正月をはじめシーミーやお盆などの準備に、スーパーや市場も賑わう沖縄。
県外の方は、お盆といえば「お墓参りのついでにプチ旅行」という方もおられると思いますが、沖縄のお盆というのは旅行どころか全員集合!といった感じで、トートーメーのある家に親戚が多く集まり、賑やかに過ごします。

さらに、沖縄の言葉で「ウンケー」「ウークイ」など、県外の方からすると初めて聞く方がほとんどだと思います。
「ウチナー」と「ナイチャー」という言葉でさえ、どっちが沖縄県民を示す言葉なんだっけ?と、いまだに悩むという方もおられるのではないでしょうか。

ウンケー・ウークイとは

沖縄のお盆は、旧暦の7月13日〜15日の3日間
「ウンケー」とは、初日にご先祖様を「お迎え」する日。沖縄の炊き込みご飯である、ジューシーや、サトウキビをお供えします。
「ウークイ」は「お見送り」という意味でご先祖様をお見送りする日のこと。
「ウサンミ」と呼ばれる重箱をお供えします。
2日目は3日間の真ん中として「ナカビ(中日)」と呼ばれます。
最近では、重箱やお惣菜などのお供物を、スーパーや専門店で購入する家庭も多くみられます。

ウークイの日に燃やすあの世のお金でもある「ウチカビ」は、まさに沖縄独特の風習。毎年モクモ
クの煙の中、ご先祖様をお送りします。これをいつか息子が受け継ぐ時がくるのか、と思うと同時
に、10年後も変わらずにこの伝統は受け継がれているのだろうかと考えることがあります。

また、「お墓でピクニック」とも言われるシーミーについては、お墓で食事??とビックリされる方もいますよね。県外でのお墓のイメージは、こぢんまりとしていて集まるようなスペースがなかったり、怖いイメージをお持ちの方が多いお墓ですが、先祖崇拝が根付いている沖縄の人にとってはご先祖様を身近に感じられる「神聖な場所」というイメージがあります。

シーミーとは

二十四節気の一つである清明(せいめい)の時期に行われる、沖縄の年中行事の一つ。4月から5月のゴールデンウィーク頃までの期間に行います。
お墓の前に親族が集まってお墓参りをし、宴会や食事をしながら、親睦を深めます。

沖縄のお墓は人が住めそうなほど大きく、存在感があります。
住宅街に溶け込むようにお墓が残っているところもあり、旅行者や移住者の方にとって不思議な光景のようです。
2021年に照屋漆器店が行った「仏壇仏具や沖縄の行事等についての県民意識調査」によると、沖縄の年中行事を「簡単に済ませるようになった」が56.7%、「行わないものも増えてきた」が24.0%でした。
また、仏壇行事を「負担に感じる」は16.7%、「やや負担に感じる」は26.7%で、合わせると約4割の結果となっています。
「大切な伝統だから」「文化だから残しておくべき」という意見も多く見られる反面、「時代に合わな
い」「子供に負担をかけたくない」「自分の仏壇はいらない」という意見もみられます。

受け継く側にとって、「伝統を知りたい・残していきたい」と思うと同時に「いつか伝える立場になる
ことを考えると、子供達がこのままずっと沖縄にいるとも限らない・自分の道を進む中で伝統が足かせになるかもしれない」そんなふうに悩む方もおられます。
さらには、少子化により継承する人がいなかったり、県外に移住する人や「ミニマリスト」と呼ばれ
る生き方を選ぶ人も増え、お仏壇や伝統行事についてはさらに悩みが増えていくのではないかと思います。

多様化する暮らしの中で変化しているお仏壇

沖縄のお仏壇は「埋め込み型」で立派なものが多いです。沖縄に移住された方からは、その豪華さなどによく驚かれます。昔ながらの沖縄の民家では、このお仏壇を置く部屋が決まっていました。
その間取りの多くは土間(台所)と5つの部屋がある家が多く、特徴的なものでした。現在も残っている古民家をみると、開放的で独特の雰囲気があります。玄関のようなものがなく、縁側から入っていたというので驚きです。

部屋は表座と裏座にわかれていて、裏座には寝室、表座には3室の畳間があり、一番座・二番座・三番座と分かれていました。その中でも家の中央にある二番座の畳間に仏壇を置くのが風習でした。
最近では、一軒家よりも賃貸でのアパート・マンション暮らしも多く、埋め込み型のお仏壇を置くことが難しい家庭も増えています。
既出のアンケートでも「持ち家は41.7%」に比べて「賃貸暮らしは53.0%」と、生活スタイルが変化しているのがわかります。
しかし、「沖縄仏壇」と「家具調仏壇」のどちらが良いかというアンケートに対して、20代の80%、30代の66.7%が「沖縄仏壇」を選んでおり、暮らしは変われど、伝統を受け継ぎたい思いも感じとれます。
現代の住まいに合わせて、様々なスタイルの仏壇・仏具が販売されています。暮らしに合わせて今ある仏壇をリフォームするという選択もありますね。仏具についても、インテリアの一部のような洋風スタイルや、沖縄らしい琉球ガラスのものもあり、好みに合わせて揃えることもできます。

2021年には、デジタル化されたお仏壇まで登場しました。生前の声を流すことができたり、呼び掛けに応じて写真が現れるとのこと。スマートスピーカーを使いこなしている人にとっては、こちらの方が身近なものになりそうです。
時計や手帳のように、お仏壇にも「デジタル派?アナログ派?」そんな風に聞かれる時代が、いつか訪れるかもしれません。
多様化する社会の中で、形を変えながらも大切な部分は変わらずに。

トートーメーと共に受け継がれてきた想いを、これからも繋いでいきたいですね。