お役立ちコラム

お墓参りしていいのは年に3回だけ?沖縄独自のルールについて

本州とは違う沖縄のお墓参りについて

沖縄のお墓参りは、本州と違い頻繁には行きません。年に3回あるお墓参り行事「シーミー(清明)」「タナバタ(七夕)」「ジュールクニチー(十六日祭)」では、家族や親族が集まって大所帯でご先祖様を囲み、墓前で宴会を催します。

本州では檀家制度があり寺院がお墓を管理するのが一般的ですが、沖縄のお墓は昔から個人が所有する墓地「個人墓地」にお墓を建ててきました。現在では霊園へお墓の改葬(引っ越し)をするケースも増えてきていますが、個人墓地はまだまだ多い状況です。

沖縄では、祖先を身近に感じ、その霊魂が子孫に影響を与えるという「祖先崇拝」の考えが根強く、祖先を大切にまつる行事や風習があります。

沖縄のお墓の特徴

ご先祖様を大切にする沖縄では、同じ先祖を持つ親戚同士の関わり合いが深く、父系の血筋を持つ長男が継承していく「門中制度」があります。お墓を共用して使い、多くの骨壺を納めるため、必然的にお墓を大きく作るようになりました。

また、シーミー(清明)などの時期には、たくさんの親族がお墓の前に集まり、供養や宴会が行われます。そのため、多くの人が集まれる場所としてお墓を広くする必要がありました。

沖縄でのお墓参りの頻度

本州では月命日になると毎月訪れる家族もいるなど、気が向いたときに、いつでもお墓に行けますが、沖縄では年中行事以外はなるべく避けるように言われています。

その理由として「周辺の霊魂や無縁仏がついてくるかもしれない」「そのお墓だけを人が尋ねると、周囲のお墓の魂が寂しがる」ためと言われています。

沖縄ではお墓とお仏壇はつながっているとされているため、仏壇に手を合わせることでお墓参りの役目を果たしているとされます。

沖縄のお墓参りの三大行事

沖縄では頻繁にお墓参りには行きませんが、その代わり大勢で賑やかに行うお墓参りをする行事が年に3回あります。

ジュールクニチー(十六日祭)

毎年旧暦の1月16日に行われる、亡くなった人のためのお正月で、主に宮古島地方や八重山地方の離島の地域で盛んな行事です。

沖縄では亡くなって一年経たない故人のことを「新仏(ミーサー)」と呼びます。ミーサーが亡くなってから初めて迎える十六日(新十六日)では、ミーサーはまだ三途の川を渡った場所にいるとされています。そのため遺族はこの日に追善供養をし、故人がより良い環境へと行けるように祈願します。

ジュールクニチー(十六日祭)は弔事のため、喪中の時期は、お祝いの意味合いがあるシーミー(清明)を控えます。

シーミー(清明)

シーミー(清明)は、中国から伝わった祖先供養の行事で、毎年4月頃に訪れる24節気の1つ「晴明」の時期に行われる代表的な沖縄の行事です。1768年頃に琉球王朝へ伝わり、沖縄の庶民へと広がりました。

シーミー(清明)の時期の沖縄県内各地のお墓の前では、みんなで重箱やお弁当を広げて、親戚や家族などでピクニックのようにワイワイとお墓参りを行う様子が見られます。県外の方から見ると不思議な光景ですが、沖縄の人々にとっては一年で最も大事なイベントです。

タナバタ(七夕)

全国的な七夕とは違い沖縄のタナバタ(七夕)は、旧暦の7月7日にお墓の掃除美御前にてご先祖様に6日後に訪れる旧盆の案内をします。

またタナバタ(七夕)は神様の目が届かない「ヒーナシタナバタ(大安や仏滅を気にしなくて良い日)」と言われ、日取り決めが必要なお墓の建て替えや墓じまい、仏壇交換などの仏事ができる日です。

地域によっては、タナバタスーコー(七夕焼香)と言って、リューグ(竜宮の神様が祀られている場所)で、海で亡くなった人のお焼香をしたり、海岸でウトゥーシをして成仏を願います。

沖縄でお墓参りのお供え料理

沖縄のお墓参りといえば、「お墓でピクニック」とも言われるように、墓前で親族一同が集まって、お供え物を分け合い食べる光景が全国的にも有名になりました。

シーミー(清明)やジュールクニチー(十六日祭)では、お供え物として、線香、お花、お茶、お水、お酒の他に祝い用の重箱料理を準備します。重箱料理には、三枚肉、カマボコ、魚や豆腐の天ぷら、昆布、お餅などが入り、奇数個を供えるのが一般的です。

盛大に行われるシーミー(清明)やジュールクニチー(十六日祭)に対し、タナバタ(七夕)は少人数で行うのが特徴的です。人数が少ないので、ほとんどの地域では重箱料理を用意せず、供え花やウチャトゥ(お茶)など、簡単なお供物で済ませる場合も多いです。

ヒジャイガミ様やご先祖様にお供え物を食べていただいてから、墓前に集まった全員でお供え物を食べます。

沖縄のお墓参りのマナーについて

沖縄のお墓参りには注意すべきマナーがいくつかあるので紹介します。

「ヒジャイガミ様」にお供えをして御願(ウガン)をする

沖縄ではお墓参りに来ると、最初に墓地を守ってくださるヒジャイガミ(左神)様を拝み、日ごろの感謝と本日の目的を報告します。向かって右側がヒジャイガミ様の鎮座する場所になるので、お供え物をして御願(ウガン)をしましょう。

ヒジャイガミ様への御願(ウガン)をしてから、中央のご先祖様を拝んでください。

お墓をきれいに掃除する

まず、供養の前にお墓周りを清掃・雑草の取り除き、お墓をていねいに掃除しましょう。ただし、お墓を硬いたわしやブラシでこするのはやめましょう。ゴシゴシこするのではなく、基本的には雑巾などで水洗いをして、しっかり水分を拭き取ってください。

他のお墓には拝まない

沖縄のお墓は「あの世の家」と言われているため、他のお墓を覗いたりすることはマナー違反です。

他のお墓を通り過ぎる際に、挨拶として手を合わせることも控えましょう。お墓の魂が寂しがるため、必要ないと言われています。全国的なお墓参りマナーと同様ですが、集合墓地など、自分の家のお墓へ行く際に他のお墓を通る時には、注意をしましょう。

お供え物は持ち帰る

沖縄のお墓参りでは、お供え物として持参した花や食べ物などは、動物に荒らされたり、腐ったりするのを防ぐため、基本的に持ち帰ることが基本です。ただし、水やお茶は使い切るとされているため、その場で全て利用して、自宅に持ち帰らないようにしましょう。

お墓参りすべきでない人

沖縄のお墓参りでは、妊婦とその家族・家を新築している家族などは、同席することを禁じられています。お墓に「引かれる」ため、納骨時に扉を開けたり、同席したりすることを避ける必要があるのです。

また、故人と同じ干支日の人々はお墓に「引かれる」として、参加を控える風習があります。

その他、一部の家や地域では、お墓に「引かれないように」と、子ども達の参列を好まないケースもあるようです。

先祖とのつながりを深める沖縄のお墓参り

沖縄のお墓参りは、琉球王国時代からの伝統や、自然崇拝の思想、そして独自の宗教観などが複雑に絡み合い、現在の沖縄のお墓参りのスタイルとなっています。

沖縄のお墓参りは、単なる故人を追悼する行為にとどまらず、祖先とのつながりを深め、地域の文化を継承する大切な行事です。

本州とは異なる独特の風習やマナーがあるため、沖縄では、沖縄のルールに合ったお墓やお参り方法を採用するのが良いでしょう。