沖縄の仏壇 照屋漆器店 ── 時は変われど、変わらぬ想い
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沖縄の御願に欠かせない神様「ヒヌカン」。今でも多くの家庭で祀られ、馴染み深い神様ですよね。
年中行事などの仏事でもまず最初に拝み、とても大切にされています。
県外から移住された方の中には、台所に神様を祀る習慣がなく、コンロ周辺に置かれた「ウコール」や「チャーギ」などが不思議に映るようです。
ヒヌカンは火を守る神様として、台所に立つことが多い女性が拝む役割を担ってきました。
ヒヌカンの他にも、同じように大切にされてきた神様がいらっしゃいます。
「床の神」といい、沖縄の方言では「トゥクヌカミ」や「トゥクシン」と呼ばれます。家族を守る神様として、床の間に祀られています。
トゥクヌカミは「マンジ繋ぎの神様」として、代々継承されました。
「マンジ(真筋)」とは父系の血統で、長男に受け継がれます。
そこからマシジの御先祖様へお通しし、感謝を伝えたり家族の安全や健康を祈願します。
次男以降は、次男をグァンス(元祖)として新しく掛け軸を仕立てます。
ヒヌカンへの御願は女性が担うことに対し、トゥクヌカミは一家の大黒柱である男性が担います。
一つの家庭に、ヒヌカンとトゥクヌカミの両方の神様を祀ることで、家庭内で陰陽のバランスが取れるのです。
しかし、トゥクヌカミはヒヌカンのように県民の暮らしには浸透せず、一時は廃れていました。
その背景には、御願を行うのは主に女性のため、男性は拝む必要がなく積極的な御願がされてこなかったことが一因と言われています。
ところが、近頃ではトゥクヌカミを仕立てる人が増えてきています。
世界情勢や経済も不安定で落ち着かない世の中の影響から、心の拠り所を求める男性が増えてきているようです。
お仏壇のご先祖様はもちろんのこと、御願できる対象があるというのは心強く生きる支えになり、有難い存在ですね。
1392年、中国から渡ってきた「久米三十六姓(くめさんじゅうろくせい)」により伝わり始め、1700年代頃から広がったと言われています。しかし、当時はほとんどの一般家庭に床の間がなく、琉球王国に仕える位の高い家系だけで祀られていました。近年に入り、一般家庭にも普及していきました。
床の間のある家が少なかったことも、トゥクヌカミがあまり浸透しなかった理由の一つと言われています。
琉球王国時代に中国から琉球に渡り、久米に定住した職能集団。
「三十六」とは「36」という意味ではなく、当時の中国では「大勢の」という意味を持っていました。
つまり「中国から久米に渡り定住した大勢の職人たち」を意味しています。
昔の沖縄では平屋の家が多く、部屋もはっきりと分かれていました。
その間取りは正面から入ってすぐの部屋が一番座、左に二番座・三番座と続き、その奥が台所です。
トゥクヌカミは一番座に置かれ、お仏壇は二番座に置かれていました。
近年新しく建てられている家では間取りが昔と異なり、もともと床の間がないところも多いです。リビングなど日当たりの良い部屋の一角にスペースを作り、祀られている家庭もあります。
トゥクヌカミはヒヌカンとは違い、床の間に掛け軸を掛けて祀られる神様です。
掛け軸と言っても単に飾りとして掛けるわけではなく、セジリョク(霊力)にも関係があり、家風やその人に合った掛け軸を掛けています。
トゥクヌカミの面白いところが、家庭ごとに色々ないい伝えがあり、継承される掛け軸もさまざまなのです。掛け軸に描かれている神様によって、ご利益が違います。
本州では、御利益をいただきたい神社へ参拝し、お札やお守りを購入する。そういったことはありますが、トゥクヌカミのようにご利益をいただきたい神様を選べる。さらには掛け軸で自由に仕立てられるというのは、あまり聞かないのではないでしょうか。
沖縄独特の面白い風習だと思います。
トゥクヌカミの掛け軸にはさまざまな神様が描かれてます。
中でも沖縄では
など、金銭や子孫繁栄を守る現世の利益に強い神様が好まれています。
また、トゥクヌカミは知恵を授ける神様でもあります。
ジンドゥク(銭徳)、クェードゥク(食徳)、ヌチドゥク(命徳)を授けてくださる神様として、重んじられています。
「銭、食、命」と、私たちが生きていく上で欠かせないものに対して守ってくださる神様。ぜひお家にお迎えしたいですね。
トゥクヌカミは、ヒヌカンと同じように年中行事や毎月旧暦の1日と15日に拝みます。拝む際には、ヒヌカンや仏壇とともに、床の間にもお供え物を供えます。
関帝王と観音様の場合は、1月・5月・9月の「正五九月」の縁日に拝む家庭が多いです。
正五九月(しょうごくがつ)」
沖縄で忌み月と言われ、災いや厄災を避けるために慎む月。
縁日
それぞれの神様とご縁を深く結ぶことができる日
関帝王:13日 観音様:18日(ジューハチヤー)
お供えには以下のもの並べます。
トゥクヌカミのウサンデー(お供えを下げたもの)は、男性がいただきます。
ヒヌカンは親元から灰を分けて仕立てますが、トゥクヌカミは自由に仕立てられます。
新しく仕立てる時には、好きな神様の掛け軸を購入し床の間に飾ります。
トゥクヌカミは、日々拝みを続けることでより深く神様と繋がり、そのパワーも増していくと考えられています。そのため、床の間がなくても掛け軸にこだわらず、コンパクトなスペースに霊石などのシンボルを祀る家庭が増えてきました。
めまぐるしく変化しているご時世。自分の軸を持つことが大切だと言われます。
様々なことも簡素化されて便利ではありますが「いまここに心をこめて過ごす」という時間も減っているように思います。
トゥクヌカミのように拝むシンボルをもち、心を通わせる。
そうして心を整えることで日々の生活が向上し、子孫繁栄や家庭の平和などが広がっていくのではないでしょうか。
ヒヌカンとトゥクヌカミは、私たちの家族の幸せを守る存在です。
照屋漆器店では仕立て方や配置など分からないことは専門スタッフがご相談をお受けいたします。
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