お役立ちコラム

沖縄の仏事に欠かせない仏具「ヒラウコー」

 沖縄には、本土では見られない独特の仏具がいくつかありますが、特に身近な仏具がヒラウコーですね。

 移住者の方からは「どうやって使えばよいのか」「どうしてこの形をしているのか」などという声を聞きます。さらに、実際に使うときにはうまく割れなくて、苦戦すると言う方も。

御願の種類やお線香を拝する人(立場)などによってもその本数が変わるため、沖縄の人々でも何本供えれば良いかわからなくなることがあります。
ヒラウコーの数え方やお供えする方法など、基本的なことは知っておきたいですね。

日本の線香とヒラウコーとの違い

日本で広く使用されている線香は、さまざまな香りや色がついているものが多いですよね。

 沖縄のヒラウコーはあまり香りがしないのですが、それぞれの線香は原料に違いがあります。

  • 日本の線香の原料
    主原料はタブ粉と呼ばれる、クスノキ科の「﨓(たぶ)の木」の皮を粉にしたものです。水と香料を混ぜて作られます。

  • 沖縄のヒラウコーの原料
    主原料は車麩を作るときに残るデンプンです。水と木炭を混ぜ、香料を使用しないのが特徴です。

過去には芋クズを使用したり、馬糞で作られていたこともありました。なかなかの臭いを放ちそうですね。昔は高価だった日本の線香の代わりに、沖縄独自の線香が作られたとも言われています。

線香に香りがついていないのは世界的にも珍しく、沖縄独自の文化といえます。
ヒラウコーと区別するために、沖縄では日本の線香に呼び名がついています。

 

  • 「イッポンウコー(一本御香)」
    ヒラウコーは、一片を六本と数えますが、日本線香は1本のため「イッポンウコー(一本御香)」と呼びます。

  • 「カバシウコー(香ばし御香)」
    日本の線香はとても香りが良いので「香り高いお線香」と言う意味合いで「カバシウコー」と呼びます。

 

沖縄のヒラウコーとは

 ヒラウコーは漢字で書くと「平御香」で、6本が1組にくっついたような、平らな板状をしています。数え方は、一片(ひら)、二片ですが、ウチナーグチでは、チュヒラウコー(一片御香)などと呼ばれます。

使用する本数は御願の内容によって変わる

 ヒラウコーは御願の内容によって、呼び名や使う本数が変わります。

 

  • サンブンウコー(三本御香)1/2片
    【三本には、「天・地・自分」や、「天の神・土地の神・竜宮の神」という意味があります。「挨拶」の意味があるお正月やお盆の仏壇へのお供えでも3本をお供えします。】

  • ナナフンウコー(七本御香)
    【ニ片からそれぞれ、四本(三分の一片)とを三本(二分の一片)を取り、お供えします。】

 

 沖縄では「七」は「後生(あの世)と現世を繋ぐ」特別な数字として扱われてきました。故人の魂は「七つの役場」を通って、後生(あの世)へ向かいます。七役場への御願では「ナナフンウコー」で拝みます。

 

  • ジュウニフン (十二本)
    【線香ニ片をさし、トゥクヌカミや仏壇、お墓などを拝む時に使用します。普段の御願でもジュウニフンを基本として供えるため、使用頻度の多い本数です。】

  • ジューゴコー(十五香)
    【線香ニ片と三本(二分の一片)を合わせた15本をさします。旧暦の1日と15日には、ヒヌカンへ十五香を供えます。そのほか土地の神様への祈願報告、特別な御願をする際にも使用します。】

  • ジューナナフン(十七本)
    【線香ニ片と三本(二分の一片)と、ニ本【三分の一片)を合わせたもの。ウスリコーブン(畏れ香分)とも言われます。カミンチュ(神人)などの拝みに慣れている方々が供えることが多く「恐れ祈願」や「解き祈願」、「下げ祈願」に用いられます。

 


補足
恐れ祈願 お詫びする祈願
解き祈願 年末に祈願ごとを解く御願
下げ御願 一度お願いした祈願ごとをやめる御願

供え方によっても呼び名がある

 沖縄では線香の数え方だけでなく、供え方にも呼び名があります。

  • チジウコー(頂御香)
    自分自身の祈願をする場合に使用する御願で、線香を3本供えます。

  • ヒジュルコー(冷たい御香)
    火を点さずに、そのまま供える線香のこと。拝所や、火災の心配があり火を使えない場所では、火をつけずに供えます。「シルカビ」という半紙に乗せてお供えします。火をつけ、煙によってご先祖様と通づるイメージがある線香ですが、火をつけずにお供えするのもまた、沖縄独特の文化といえます。

  • フトゥチウコー(解き御香)
    年末にヒヌカン(火の神様)が家から天へと帰るために、一年の無事を感謝し、その年の「祈願を解く」時などに拝するヒラウコーを指します。

 

ジュウニフンは干支に関係している

 ヒラウコーは日常的に、二片を重ねた十二本で使われる場合が多いのですが「十二」の数字は、干支と関係しています。

 干支は年齢や1年、日を表すことがありますね。ほかにも方角や場所を表しています。

ヒラウコーの十二本の煙は、過去・現在・未来の時空を超えて四方八方360度、すべての方向に向かって、自分の祈りや願いが届きますようにと言う意味が込められています。

 そのほか、十二本を供える場合には、さまざまな意味があります。
 

  • お仏壇に供える
    御先祖様への「ウトゥーシ(お通し)」をする意味合いがある。

  • 二片重ねて供える
    夫婦和合の意味があり、亀裂の入った夫婦仲の和合を祈願する。

  • 干支(十二支)へ供える
    十二方角、四方八方の神様へ願いを通す。

  • 一年の健康や繁栄を祈願する
    「十二か月」の意味合いを持って供える。主に家族の代表として供える場合に用いる。

 

ヒラウコーを供える香炉は「ウコール」

ヒラウコーを供えるための香炉は、沖縄では「ウコール」と呼びます。

 ヒヌカン(火の神)などに使う、白い香炉は「カミウコール(神御香炉)」呼び、

拝所(うがんじゅ)や御嶽(うたき)にあるものは「ウトゥーシウコール(御通し御香炉)」と呼ばれます。

 また、沖縄のお仏壇で使われる香炉は、青色で中央に花の絵が描かれたものが多いですが、これは「グァンスウコール(元祖御香炉)」などと呼ばれてきました。

割れたヒラウコーは使わずに処分する

 移住者の方にとってうまく割るのが難しいヒラウコー。

 とくに湿気を含むと割れやすいので、保管場所には気をつけましょう。

 もし割れてしまったり欠けている場合は使わずに処分します。
 その場合、そのまま捨てると「線香」の意味をもったままなので、さらに半分に折り「ゴミ」として処分するのがベストです。

 文化やしきたりにとらわれすぎて、線香を供える度に何本だろうかと考えるのも疲れるもの。何よりも大切なのはご先祖様を思う気持ちですよね。

 近年では、住環境の変化により、小さなお仏壇を置く家も増えてきました。それに伴い1本で済ませられる、日本の線香を供える家庭も増えています。

 照屋漆器漆器でも、さまざまな香りや色のついた線香を取り扱っております。ぜひ店頭にてさまざまな線香に触れてみてはいかがでしょうか。気になることがございましたら、ぜひお気軽にスタッフまでお問い合わせください。