沖縄の仏壇 照屋漆器店 ── 時は変われど、変わらぬ想い
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沖縄では琉球王国時代から、農作物の収穫や漁獲の周期とも関連がある旧暦で生活しており、現在も旧暦行事が多く行われています。お正月も、新暦が主流となっていますが、新暦と旧暦の両方祝う家庭が多くあります。そのため、沖縄の大晦日も新暦と旧暦の2回あり、伝統的な文化と現代的な習慣が融合した特有の過ごし方があります。
2025年の旧暦の大晦日12月30日は1月28日(火)になります。
旧正月には仏壇や神棚に供え物をして、祖先や神々に祈りを捧げる家庭が多く、地域ごとに独特の習慣があります。旧暦の大晦日をトゥシヌユール(年の夜)といい、伝統的な儀式や料理とともに、家族で一年を振り返り、新年への感謝と祈りを捧げる日になります。神や祖先との結びつきを大切にする沖縄の文化が色濃く反映されています。
一方で、新暦の大晦日には、現代的なイベントやカウントダウンなどの楽しみもあり、多様な過ごし方が見られます。
では、どんな過ごし方があるのか見てみましょう。
仏壇や神棚への拝み
沖縄では、トートーメー(ご先祖様)と家庭を守護するヒヌカン(火の神)に向けたお祈りが重要で、お供え物を捧げ、一年の感謝と新年の平安を祈願します。
年末には「ヒヌカン送る」という儀式を行い、火の神を一時的に天界に送り出します。これは旧暦で行われる場合もあります。
沖縄の大晦日に行う飾り付けとして、玄関には門松やしめ飾りやソーエー(灰で書かれた魔除け)、床の間には縁起の良い若木や生け花があります。
【大晦日の飾り付けとウサギムン(お供え物)】
沖縄の旧正月でもお供え物やお飾りを、出来る限りまでトゥシヌユール(大晦日)に済ませて、新年を迎えます。主に玄関(門)、ヒヌカン、床の間に準備をします
・若木や若松、縁起の良い花
門前とヒヌカン(火の神)に若松を飾り、お仏壇や床の間には南天などの縁起の良い若木や、色の付いた菊の花などを活けます。
・しめ縄
昔の沖縄の家庭では、門や玄関に若木を飾るのみで、しめ縄を飾らない地域も多かったのですが、最近では本州式ではない沖縄独特のしめ縄が定番になっています。沖縄ならではの特徴として昆布で巻いた炭がくくりつけられています。昆布はよろこんぶ(=喜ぶ)、炭はいつまでも朽ちないように、タンと喜びがあるように、という意味だそうです。
床の間とお仏壇へは「花米」を供えます。重箱(二つ用意します)に九合のお米を盛り、上から「ウカリー(御嘉利)」と呼ばれる、赤・黄色・白の色紙をこの順に重ね置きます。さらにこの上に、二個の橙(みかん)と二個の昆布巻きの炭を置いて、これを床の間とお仏壇へお供えします。ウカリーは沖縄の旧正月では欠かせないお飾りで、この他にもヒヌカンやお仏壇で活躍します。
ヒヌカンへは、緑葉樹の葉、ミジティ(水)、お酒に、赤ウブク(赤飯)を三膳供えます。また、長方形のウカリーの上に、ウチャヌク・昆布巻きの炭・橙(みかん)を並べたものを三セットお供えします。
お仏壇には、一対のウチャトゥ(お茶)、お酒の他に、「年越し膳」(トゥシドゥイサカナ)を供えます。年越し膳は、ウカリーの上に乗せ、お膳の脇には昆布巻きの炭と、橙(みかん)を添えます。年越し膳は、お赤飯、ソーキ汁、ウサチ(酢の物)、ウチャワキ(おかずを取り分けたお皿)、お箸、になります。お膳には、一年の厄祓いとして、ニンニクの葉をそろえて置きます。ウチャワキは豚の三枚肉の煮付けや結び昆布の煮物など縁起物を取り分けます。
沖縄では、「豚は鳴き声以外は全ていただく」というほど、豚肉はご馳走でした。旧暦沖縄の大晦日でも、豚肉を使ったご馳走がメインです。昔は、大晦日には豚を丸々一頭下ろして調理していたそうで、たくさんの豚肉料理が並びました。
そのため、年越しそばの代わりには、家族でソーキ汁(豚の骨付きあばら肉のお汁)をいただき、年を越す風習がありました。現代では、本土と同じように年越しそばとして沖縄そばをいただく家庭も増えています。
また、地域や家庭によりジューバク(重箱)料理のウサンミ(御三味=御馳走)も作っていました。今では重箱にこだわる家も少なくなりつつあり、オードブルを頼む家庭も多くあります。
家族が揃って食卓を囲み、新年を迎える準備をします。
沖縄でも寺院で「除夜の鐘」をつくことができます。那覇なら首里城近くにある「首里観音堂」が知られています。地元の人々が訪れて鐘をつくことで厄を払い、新年の幸福を願います。特に那覇市内の首里城近くや地域の寺院が賑わいます。
沖縄では大晦日の夜から新年にかけて「初詣」に行く人も多数います。首里観音堂や波上宮(なみのうえぐう)などが人気のスポットです。
大晦日には観光地やホテルで特別なカウントダウンイベントが開かれることが一般的です。ライブ音楽や花火などが行われ、観光客も含めて賑わいます。有名なイベントとして「カウントダウン花火」があり、特に北谷町の美浜アメリカンビレッジ周辺が賑わいます。
大晦日には家族でテレビを観ながら過ごすことも一般的で、全国放送の「紅白歌合戦」や、沖縄特有の年末特番を楽しむ家庭が多いです。
沖縄本島北部(ヤンバル)では、自然崇拝や御嶽信仰が強く、地域ごとに独自の祈りが行われます。山間部の集落では、神事に使う供え物や装飾が他地域と異なることもあり、特定の植物や素材を用いることがあります。
那覇や浦添など中南部の都市部では、他地域よりもモダンなスタイルが普及しています。首里などの伝統的な地域では、琉球王朝時代から続く風習が影響を与えており、特にシメ飾りや仏壇への祈りに特徴があります。
離島地域では、沖縄本島や他の地域と共通する部分もありますが、独自の文化や習慣が色濃く反映されています。農業や漁業に密接した生活文化が残る地域では、年末年始に自然の恵みへの感謝を込めた神事が行われます。「御願解き(ウグァンブトゥチ)」が特に重視される地域も多く、御嶽での祈りが盛んです。久米島などでは、集落内で年末の共同作業として、大掃除(ウシヌクジュ)や神事を行うことが一般的です。このように、小さな集落では、伝統行事が家族単位だけでなく、地域全体で行われることがあります。
集落ごとに祀る神や御嶽の形態が異なるため、祈りの内容や供え物にも違いがあります。伝統的な儀式がしっかりと守られている地域もあれば、簡略化されている地域もあります。
大晦日に食べる料理やお供え物も地域ごとに微妙に異なります。例えば、本島中部以南では、豚肉を使った料理が多く、ジューシーやソーキ汁が定番となっています。一方で、北部(ヤンバル)や離島では、地元の山菜や魚介類を活かした料理が多くあります。久米島では、島で育ったもち米を使ったお餅が欠かせません。宮古・八重山地域では、八重山そばや島特有の魚料理が並びます。
沖縄では新暦と旧暦があり忙しい大晦日ですが、各地でご先祖様や神様への感謝をあらわす風習がみられ、ご先祖様を敬う人々の心が垣間見えます。